2012年度の国内鉄スクラップ需要は、高炉メーカー向けが不透明感が強まる中、電炉メーカー向け中心に増加が見込まれそうだ。日本鉄鋼連盟の見通しによると、2012年度粗鋼生産は1億トン台は維持するものの、11年度見込みの1億500―1億600トンを下回ると予測。高炉各社は為替の影響などで製品輸出の停滞や輸入増が想定され、さらに円高環境が続けば国内製造業も苦戦を強いられるとの見方もある。一方、電炉については「震災復興を含めた建築・土木関連の増加が見込まれており、関東地区ではすでに増産に動くメーカーも出ている」(商社)ほか、特殊鋼についても建設機械向けに一服感があるものの、高水準の生産を維持しそうだ。
このため、国内粗鋼生産に対して09―10年度と21―22%前後のシェアで推移していた電炉が「大幅増はないものの、シェアを多少伸ばすのでは」(流通筋)との見方が多い。12年度粗鋼生産を1億200―1億300万トン前後とした上で、シェアを09年度以前の水準、24%前後に戻ると仮定した場合、製鋼歩留まり92%前後で想定すれば国内電炉メーカーの鉄スクラップ需要量は2660万―2670万トン前後の見通しとなりそうだ。
対して2011年10―12月以降、急速に市中鉄スクラップを減らした高炉各社の需要動向は依然不透明だ。自動車生産は堅調推移しており、「震災復興へ向けた鉄鋼製品の供給が本格化すれば、高炉メーカーの市中鉄スクラップ購入増にも期待される」(流通筋)ものの、円高環境の中、ホットコイルを中心とした韓国など東アジア圏から日本への製品輸出増が懸念されており、高炉各社の鉄スクラップ需要動向にも影響を与えるとの見方もある。
12年の鉄スクラップ需要が底堅いとみられる一方で、ヤード経営の柱となる市中鉄スクラップ発生動向にも注目が集まる。リーマン・ショック後の5字回復や震災、タイの大洪水の影響を受けながらも、国内自動車生産は12年以降、リーマン前近い高水準に戻る見込み。新断スクラップを中心とした工場発生は堅調推移するとみられる。解体については首都圏での建築関連が動き出しているものの、地方では苦戦が続いている。「学校や病院の耐震化、築30年以上たった公団などの解体など潜在的なものは出始めているが、本年度からさらに回復し、リーマン前の水準に戻るのは極めて困難」(ヤード筋)との声も聞かれる。
さらにギロチン加工母材として市中で取引される「スソ物」と言われる下級スクラップを中心に、中国系業者の取り扱いが増加傾向にある。非鉄スクラップや廃モーターなどの雑品主体に集荷していた輸出業者だが、業者数の増加に加えて、資金に余裕がある業者はスケールメリットを求めて鉄スクラップの集荷、さらには大型設備を持ちギロチン加工にも進み始めており、「競争相手がここ数年で、急速に増えた。仕入れ競争が広がり、ヤード収益の圧迫につながっている」(同)と漏らす経営者も出始めている。