産業新聞社はこのほど、「第1回日本鉄スクラップシンポジウム―拡大するアジアマーケット―」を東京・茅場町の鉄鋼会館で開催した。今回初となる日本鉄スクラップシンポジウムでは世界経済の行方、世界の鉄鋼需要動向などを踏まえながら、世界の鉄スクラップ需給がどう変動し、拡大していくのか韓光熙・東部製鉄社長による特別講演やテーマ講演、パネルディスカッションを通じて展望した。
石油、鉄鉱石に続いて鉄スクラップというものは資源戦争の品目となっているなかで、シンポジウムが急変する環境を乗り越えるための知恵を絞る場として、その役割を期待して良いと思う。
東部製鉄は今年7月から上工程の一つの電炉事業を進めて、鉄スクラップ需要家として新たに市場に参加することとなった。新規需要家として、東部製鉄の原料確保戦略が鉄スクラップ関連指標に及ぼす影響、主なスクラップ輸入国となった韓国への業界の関心は高まっている。東部製鉄、韓国の鉄スクラップ指標と関連してさまざまな論点から申し上げたい。
■東部グループ、東部製鉄と新工場について
東部グループは製造・金融・サービス・支援の4種17社で、2008年の売上高は約15兆ウォンと韓国19位のグループ。うち、東部製鉄が08年売上高の3兆ウォンを上げた。東部製鉄は今年7月から300万トン規模の電炉生産が始まった。これまでは単圧冷延工場として年間270万トンを生産しており、線材工場の20万トンと合わせて590万トンの製品生産能力を保有している。
続けて設備を拡張し、粗鋼800万トンの生産能力を持ち、製品生産能力1000万トンの会社へと変わる。将来的には既存の表面処理鋼板と熱延鋼板と併せて、付加価値の高い製品の開発を進めていく。
工場拠点は仁川工場と牙山湾工場、浦項工場があり、浦項は線材中心。今回新たに完成した牙山湾工場は既存の冷延工場と今年7月から稼働した熱延工場があり、さらに残っている敷地については将来、設備を増設するつもりだ。
新工場の設備については従来の電炉は上から鉄スクラップを入れるが、弊社では横から鉄スクラップを入れるコンスティール式で160トン電気炉2基を持つ。連鋳機は2基で70―85ミリのスラブを生産する。
鉄スクラップはふたを開けずに挿入するので環境に優しく、電気炉廃熱を利用して鉄スクラップを予熱することでエネルギー消費を低減。省エネルギーとCO2排出削減に加えて、なおかつ生産性の高い設備で44分で1チャージを行う。
■韓国鉄スクラップ市場、東部製鉄の購買政策などについて
韓国のスクラップ市場についてだが、国内鉄スクラップ発生は年間70万―80万トン前後増加している。対してスクラップ需要は現在、さまざまな韓国電炉メーカーが設備を増設しており、発生の伸び率よりも需要の伸びが高くなっている。現段階で自給率は75%。
10年以降の鉄スクラップ使用量は3000万トン以上とみられ、自給率は徐々に上昇するものの、100%になるのは22年ごろとなるだろう。他の設備計画もあり、(自給率100%は)遅れる可能性もある。
スクラップ発生率は解体スクラップが50%、高炉メーカーなどからの自家発生が25%。地域別で見ると、ソウルなど首都圏の場合は、発生量と生産量がほぼ101%とミートするが、嶺南圏は生産に対して発生が49・8%、中部圏は42・6%と不足している。国内の鉄スクラップ購買量は現代製鉄と東国製鋼で約50%を占め、POSCOは自家発生もあって7%程度。
流通構造を見ると大商、中商、小商の3段階。一般的に電炉メーカーに納入しているのは大商だったが、段階的に広げて中商も半分以上が直接納入するようになる。ただし小商は資金力が弱いため、特別に前払金、保証金を支給している。
取扱業者は2000年で約5000社だったのが、08年には9000社以上になった。一方、電炉メーカーは11社のまま。この理由は、これまで電炉メーカーは1社からだけ鉄スクラップを購入していたが、現在ではこの規制が緩和されてマーケットがオープンになり、購入量、取扱業者数が増えた。加工設備の保有状況は、韓国は日本に比べてまだ低い。
韓国の購買形態は一般的に、登録された業者のみを通じて購入する。価格は一般告示価格。特別価格で運営することもあり、場合によればインセンティブをつけることもある。棒・形鋼メーカーは一般中低級スクラップを近隣から購入し、特殊鋼は高級・一般中級スクラップを広域で購入している。
鉄スクラップ総輸入量のうち、日本からが約50%で、次いでアメリカ。日本の鉄スクラップは品質も良く、距離も近く韓国との納期の差がほとんどないなどメリットは多い。来年以降も日本からの輸入は、50%前後で推移するだろう。
国内業者、国際価格に高い関心
韓国の鉄スクラップマーケットは保守的だったが、現在はオープン。繰り返しとなるが、一社一納品制は崩壊し、今は多数の業者から購入している。インターネットの発達ですぐにマーケット情報が手に入り、さらに高速道路網の拡充によって全国に4時間以内で納入できるようになったためだ。スクラップ業者の資金力増加に加えて、国内と海外とのマーケットの差が縮小したこと、為替レートの変動など、国内業者の国際価格への関心は高く、対応力も高くなっている。
東部製鉄の鉄スクラップ購入計画についても述べたい。現在は鉄スクラップが約70%、残り30%がHBIか銑鉄を購入している。ただ、銑鉄価格が安くなっているので、必ずしも鉄スクラップにメリットがあるわけではない。
鉄スクラップは価格変動が激しい。安定経営のため、そして高炉メーカーに対してコスト競争力を上げるために、東部製鉄では鉄スクラップを代替できるものを開発して使用する計画だ。鉄スクラップ使用を45―65%、銑鉄・HBIを25―35%とし、残りが新代替材を使う。
原料確保計画は鉄スクラップが国内から55―60%、海外10―15%、銑鉄・HBIが25―35%の購入を計画している。鉄スクラップは国内では登録している24社から購入し、海外からはアメリカのスポット契約となる。また、HBIはロシアやマレーシアと長期MOUを結んだ。
東部製鉄、対高炉に向け新鉄源
それでは電炉が将来、高炉と比べてどのような競争力を持てるか。今、アメリカでは電炉が55%と高炉が徐々に弱くなり、ヨーロッパでは電炉メーカーが50%と拡大している。一方、中国は電力が足りず、日本は韓国などに比べて電気料金が高く、いぜん高炉が強い。しかし高炉はCO2排出が課題で、コークス生産などによるエネルギー消費も電炉に比べて大きい。電炉は鉄スクラップリサイクルと環境的だ。
東部製鉄では、アルミや砂など不純物が入った鉄鉱石を電気炉で使用する処理方法も開発している。電気炉工場を建設したのは将来的に見て高炉と比べて競争力がある製品を造ることが可能で、また、造らなければならない。
そのために鉄分92―95%の直接溶融還元鉄の生産の計画、同81―89%の「Semi・Fused・Iron」という新鉄源を開発中で、これらが電炉メーカーが将来、電炉との競争ではなく、高炉メーカーと競争するためのカギとなる。