国内鉄スクラップ需要に回復の兆しが見えない。2008年ピーク時には月間約280万トンだった国内電炉生産量は09年3月の約129万トンを底に回復しているものの、いぜん180万トン前後と低水準で推移。この大幅減産を受けて、国内鉄スクラップ消費は昨年ピーク時から100万トン以上減少している。10年1―3月は高炉各社の生産回復が見込まれる一方、マンションなどの建築事業も低空飛行が続くなか、10年度は公共工事の大幅な減少が予測されており、電炉メーカー各社の生産見通しは厳しい。
鉄スクラップの国内消費減に加えて、建築不況や自動車など一部業種を除いて製造業が軒並み生産縮小を余儀なくされていることにより、鉄スクラップ発生・流通量の大幅減が商社、鉄リサイクル企業に暗い影を落とす。商社は1トン当たり数百円の手数料を得て業務を行っているが、「これまで通りの商売を続ければ確実に行き詰まる」(商社)と先行きを懸念する。実際に異形棒鋼メーカー向け中心に流通業務を行っている商社は、「大幅減産による需要の縮小で、販売数量は大幅に減少した。国内メーンの業務を続けてきたため、輸出も積極的に行っておらず、収益は大幅に落ち込んでいる」という。
商社の苦戦が余儀なくされるなか、「販路が狭まることはあってもそれは一時的。鉄スクラップはすでにアジア同一市場。販売先に困ることはない」(ヤード経営者)との見方が大半。その半面、ヤード取扱量の大幅減による収益悪化が最大の課題となっている。
ある鉄スクラップ企業では市中鉄スクラップ発生・流通量は大幅に落ち込みにより、自社取扱量は前年比約25―35%減少し、「とくに上半期は月次で赤字が続いた」ほか、複数の拠点を持つ鉄スクラップ企業が一部工場を売却したいという声も出ているという。また、ようやく地区内の仕入競争も一服したという経営者は平均売買差の拡大によって下半期は黒字化したというが、各社の収益が回復すれば再び仕入競争が起きる可能性も大きいと懸念する声もある。
従業員が10―20人程度、大半の輸送が外部委託といった鉄スクラップ企業も多く、コスト削減にも限界があるために、赤字を避けるためには売買差確保が至上命題。取扱量の減少分を補うためには利幅の拡大しかないものの、電炉メーカーが製品安の鉄スクラップ高を懸念するなか、鉄スクラップ企業も同様の状況に陥る可能性もある。
国内メーカー向け専門のある業者は、「売り先によって当然、商社間、ヤード間に競争力の格差が生まれる。仕入高の売り安に転じるのでは。メーカーへの納入責任はあるが、国内専業では厳しい」との不安を抱える。
国内消費、発生とも低水準で推移するなかアジア圏には高い成長率を維持する国がひしめいており、日本と日本を除くアジア地域の鉄スクラップ消費ギャップはさらに拡大する公算が大きい。「これまで鉄スクラップは『地産地消』だったのが、アジア、世界へと市場が広がっている。経営そのものの考えを切り替える必要がある」(ヤード経営者)との声も聞かれる。