韓国で電炉の増設と大型化の動きが進んでいる。電炉ホットコイル部門に来年夏から進出する東部製鉄は、既契約の１６０トン炉に加え新たに１００トン炉を導入する方針を固めた。東国製鋼は、小型旧炉の効率化を目的に１００トン炉の導入を図る。いずれもダニエリとの交渉が本格化している。現代製鉄は５月から仁川工場で休止中の70トン電炉を再稼働。９月に50トン炉も動かす。年末には韓国特殊形鋼の１００トン炉が稼働する。１００トン以上の大型炉の新規稼働は来年に向け５基が稼働する見通しで、単純計算で年間６００万トン強の鉄スクラップ需要が発生する。

　薄板のリロールメーカー・東部製鉄は、リロール用ホットコイルの自社生産を目的に牙山工場に１２０トン炉２基を導入する。来年夏場からの稼働で年間２４０万トンのホットコイルを生産する。これに加え新たに異形棒市場への進出を目的に１００トン電炉の導入を行う方針。収益性の高い異形棒で短期での投資回収を狙ったもので、年間１００万トンの異形棒生産を計画している。追加の１００トン電炉は、ダニエリと交渉しているようだ。ホットコイル用の鉄源は、鉄スクラップ、銑鉄、還元鉄などで２８０万トン。異形棒用としては１００万トンが見込まれている。

　東国製鋼は、異形棒工場の老朽化した小型電炉２基を１００トン炉に更新する。欧州や日本のプラントメーカー数社と交渉を進めていたようだが、ダニエリが最終的に残ったもよう。大型炉への転換で、多少の電炉鋼の増産が図られる見通し。

　現代製鉄は、造船形鋼の増産を目的に仁川工場で休止中の70トン炉を５月から再稼働させた。さらに50トン炉も９月に再稼働させる。造船形鋼や異形棒の増産に対応するもの。これにより新たに年間２００万トン近い鉄スクラップの調達が必要になる。

　大韓製鋼は、緑山工場に80トン炉を導入する。６２０億ウォンの投資額で、ビレット生産能力は、年間75万トン。現在40万トン規模の単圧であるが、年末には電炉一貫化が実現する。

　アングル、チャンネルメーカーの韓国特殊形鋼は、慶南漆西工業団地に１００トン電炉を導入。２００８年11月からの稼働を予定している。現在単圧で操業しているが、年末には電炉一貫での生産が開始される。韓国特殊形鋼と大韓製鋼は、単圧から電炉一貫への移行で、現在調達している電炉が両社の一貫化で減産すれば、スクラップ需要は横ばい。

　韓国鉄鋼協会によると韓国の２００７年の鉄スクラップ消費は２８６９万トン、前年比17・７％増加。国内発生の不足分を補うため輸入しているが、昨年は６９２万トン、同19・５％増加している。こうした輸入スクラップの増加傾向の中でこれから大型電炉が相次いで稼働すれば、来年以降の輸入量は年間１０００万トンを超すとの見通しがある。アメリカ、日本を中心にロシアさらには豪州なども視野に入れた鉄スクラップの輸入対策が取られるもよう。韓国電炉の増設は、日本の電炉業界にとっても大きな変数となって市況の高騰要因を提供することになる見通しで、来年以降も鉄スクラップは高原相場が継続しそうだ。