産業新聞社の鉄スクラップ取材班はこのほど、東京・名古屋・大阪地区の鉄スクラップ加工・販売企業に対して緊急アンケート(回答52社)を実施した。東アジア向け輸出市況や為替動向、高炉メーカーを含めた国内鉄スクラップ需要など不確定要因が多いなか、本年度下期の市況について「上昇」「強基調」と「弱基調」「下落」との回答がほぼ同数に分かれるなど、市中の先行き不透明感が鮮明となった。
今回のアンケートは9月上旬までに行ったもので、52社から回答があった。このうち、9月に入り一部地域で小幅下落するなど、調整局面を迎えている下期の市況について、「上昇」は4%、「強基調」は27%だったのに対して、「弱基調」は33%、「下落」は4%と、供給サイドでは強弱両含みの予測がみられた。
国内鉄スクラップ市況は年明け以降、韓国を中心とした東アジア向け輸出動向の影響が大きく、海外輸出マーケットに対する依存度が増しているとみる向きもある。「海外市況が重要視される一方で、市況変動が非常に激しい。迅速な経営判断が求められる難しい状況」(回答者)との声も聞かれる。
直近の月間取扱量に関しては「回復傾向」が33%、「横ばい」は全体の23%、「減少傾向」は37%と最も回答が多かった。ただ、「回復傾向」と回答したうち、6割以上は自動車関連のスクラップ発生が多い名古屋地区の企業が占めており、東京・大阪では直近の月間扱い量は「横ばい」か「減少傾向」が多かった。
このため、設備稼働率が「ほぼフル稼働」と回答した企業は全体のわずか6%で、「50%以下」が25%、「70%以下」が44%と約7割の企業の設備稼働率が70%以下にとどまるなど、「新規建築着工が伸び悩み、ギロチン母材となる解体スクラップの発生がいぜん低水準」(回答者)。さらに国内ヤード拠点数については、約90%が「多い」としている。
設備稼働率の低下が危ぐされるなか、母材仕入価格にも大きな影響を与えている。回答した企業の大半が母材の仕入れに苦慮しており、相場動向にかかわらず集荷競争は激化。母材仕入価格と出荷価格との値差について、「大半は適正な値差を確保できている」としたのは15%で、「半々」が52%、また、「ほとんど確保できていない」も33%に達した。