2009年の世界鉄スクラップマーケットは中国・韓国・台湾の東アジア3カ国の輸入量がトルコを約1000万トン上回り、世界最大の鉄スクラップ市場へと拡大している。中国を中心に新興経済発展国が景気対策としてインフラ基盤整備を推進、粗鋼生産の増加による鉄スクラップ消費拡大を受けて日本、米国からの鉄スクラップが東アジア圏に集中。「鉄スクラップの価格形成は、アジア市場へと主導権が移行した」(大手流通)。
中・韓・台の東アジア3カ国の09年鉄スクラップ輸入量は過去最高の2540万トン、前年から900万トン増加した。うち、日本からの輸入が900万トン、米国からが1100万トン。2カ国で約2000万トンを占め、日本は鉄スクラップ輸出量のうちほぼ100%、米国は約50%を東アジア向けに供給。対してトルコの09年輸入量は前年から約200万トン減の1560万トンで、米国からの輸入量は400万トンを割り込んでいる。
鉄スクラップ国際市況はこれまで「世界最大輸出国の米国が中心」(大手ヤード)だったが、東アジア圏の鉄スクラップ市場拡大と供給ソースが絞られていることなどで、「現時点では中国や韓国に加えて、さらには日本などの動向が国際市場に大きな影響力を持ち始めているのでは」(ヤード筋)との見方が強い。また、東アジアの鉄スクラップ需要国に加えて以前の米国のように日本が価格決定権の一翼を担うに至った背景の一つに、「ロシアの大幅な輸出減が挙げられる」(商社)という。
「投機目的によるブローカーのような個人売買での取引もあり、調達の波が激しい」(商社)中国に対して、韓国は安定して海外から鉄スクラップを手当てしている。これまで韓国は日本と米国価格を比較しながらロシアからも鉄スクラップを輸入し、契約を有利に進めてきたが、中国の鉄スクラップ輸入急増にロシアの輸出減が重なり、日本を中心とした調達にシフト。鉄スクラップ輸入の5割を日本からの供給が占めることで、日本の国内相場や韓国向け輸出価格が東アジア市場を通じ、海外へも影響を与えている。
今後、アジア圏ではインドやベトナム、マレーシアなど新興国の鉄スクラップ消費増が見込まれており、市場規模はさらに膨れ上がる見通し。一方で、「日本、米国とも鉄スクラップ発生量に回復の兆しはあるが、公共工事の削減、景気回復の遅れでピーク時には戻らない」(ヤード筋)など、世界の鉄スクラップの需給ギャップはさらに拡大しそうだ。