国内鉄スクラップ市況が続落し、関東、関西とも指標品のH2電炉買値が中心値でトン当たり3万円を割り込んだ。両地区ともトン3万円を下回ったのは2010年10月3週以来、約1年ぶり。海外鉄スクラップ市況の停滞や製品市況の下落などが、国内鉄スクラップ相場にも大きな影響を与えた。
海外鉄スクラップ市況の下落は、欧州経済不安を発端に、鉄スクラップ市場に影響の大きいトルコなどに波及。欧州や米国のトルコ向け輸出価格が大幅に下落するなど「10月以降、鉄スクラップ相場は世界的に下げ一色」(流通筋)となった。東アジアの鉄スクラップ市況も停滞し、日本から韓国向けの新規鉄スクラップ輸出価格(H2)もFOBトン3万円を割り込み始めている。
輸出停滞などを受け、関東地区電炉メーカーの炉前購入価格(H2)は、中心値2万8500―2万9500円前後(25日時点)に下落。東京製鉄宇都宮工場を含めた地場メーカーは25日までに相次ぎ購入価格引き下げを実施し、先月末からの下げ幅は6000―8000円となった。
指標の一つとなる関東湾岸買値は、FASトン2万7000円前後と前週比で約1000円安い。東アジア向け輸出、中部以西への「西送り」出荷がともにも低調で、「地区内市況はまだ下押しの可能性が残る」(商社)と指摘されている。
関西地区電炉メーカーの鉄スクラップ買値(H2)はトン2万8500―3万円前後、一部トン3万500円前後。東京製鉄の買値引き下げなどを受けて、先週末に引き続き今週25日からも大阪、姫路両地区で電炉各社の値下げが一巡している。
10月の地区内電炉粗鋼生産は9月を上回ったものの、下落基調が続いたことでメーカーへの出荷が進み、「電炉各社とも日量分は確保しており、さらに海上購入については消極的」(流通筋)。高炉メーカーの市中鉄スクラップ購入減が続いていることも、市況に影響しているという。