【名古屋】自動車関連工場から多く発生し、鋳造メーカーなどで母材として利用される鋳造向け新断スクラップの需給がひっ迫している。東日本大震災の影響で、トヨタ自動車の生産が停滞していることを背景に、中部圏の自動車部品メーカーの生産も下振れ。一大供給地での発生減に、需要家の鋳造メーカーでは、減産を余儀なくされる向きも出ている。
需給がタイト化している鋳造向け新断スクラップは、めっきなし、低マンガン系で、自動車部品メーカーによる部材の打ち抜き加工後のものでは一般に「ポンチ」などと称される。普通鋼、特殊鋼電炉メーカーで主に使用される通常の新断よりも鉄の純度が高く、高炉メーカーの供給する鋳物銑と並んで、鋳造メーカーの主原料となっている。
トヨタ自動車は、東日本大震災に伴う部品調達などへの影響により、14日から国内工場の操業を停止。28日から堤工場とトヨタ自動車九州の2工場で一部車種の操業を再開している。約2週間の生産休止で関連する自動車部品メーカーも過半が減産。足元でも「プリウス関連の部品工場でさえ、スクラップの発生は半減している」(ヤード筋)状況に加え、トヨタ自動車九州の再開で、関連する鋳造部品メーカー向けに、中部から陸送でスクラップを搬送するケースも散見されており、市中在庫の減少が続いている。
鋳造メーカーのうち、自動車向け鋳造部品メーカーでは自動車の生産停滞に合わせて、需要も小さくなっているものの、建材系鋳造メーカーなどでは需要に大きな変化はなく、スクラップの入荷難で操業に影響が出ている向きもある。地区商社、ヤードディーラーにはトン5万円超の価格で引き合いが続いているが「既存の特定業者以外からの入荷は求めようがない上、どこも在庫は薄い」(商社筋)状況で、関西、中部域の鋳造メーカーでは、足元の生産計画に対する入荷量がショートするケースが増えている。また不足分を輸入銑鉄で補うことを検討する企業も見られるものの、トン7万―7万5000円前後の価格となるため「製品市況の不透明な今、コストアップを考えると安易に手当てできない」(鋳造メーカー)との声も聞かれ、鋳造向け新断の需給ひっ迫が長期化すれば、一部メーカーの操業停止につながる可能性もある。