指標品のH2がトン当たり7万円時代を迎えた鉄スクラップは、重要な金属資源としての位置付けを確立した。国内外の鉄スクラップ需要は依然として旺盛で、このような資源高騰化のなか、中辻体制が2期目を迎えた日本鉄リサイクル工業会はどのような方向性を持ち、運営を進めていくのか。日本鉄リサイクル工業会の中辻恒文会長(中辻産業社長)に年初からこれまでを振り返ってもらうとともに、今後の方針や展望について聞いた。
――業界の動向について。
「実需の伸びが著しい。2006年度で見ると世界粗鋼生産12億トンに対して、原料として使用されたスクラップの量は4億8000万トン。比率にして約34%。いまや鉄スクラップは主原料とも表現できる位置付けだと思うが、我々自身がそれをよく認識し、行動規範に反映していく必要がある。H2トン7万円近い相場には、工業会の会員も含め違和感を覚え始めているのも確か。ただ、現在の価格形成には金融経済も含めた複数の要因が複雑に絡み合っており、しばらくは安定化が難しいと思う」
――価格の上昇などで、ビジネスの形態が変わったのでは。
「各リサイクル法が施行された00年度前後から、鉄スクラップは『循環資源の優等生』として着目された。この時点では金属スクラップ価格全体のレベルが低く、すべてが廃棄物からのリサイクルという位置づけをされたと思う。しかし、元来から既にリサイクル市場が成立している鉄スクラップ、あるいは金属スクラップと、リサイクル市場を政策的に成立させる必要があった廃棄物から取れるその他資源とは本質が違うはず。最近の価格高騰化には弊害もたくさんあるが、鉄スクラップ業界にとっては、自分たちの業がリサイクルを前提とした『資源産業』なのだということ、そして、それはグローバルな視点からも重要な業であることを改めて認識できた点は、意味あることだと思う」
――今期で2期目に入る。今後の事業計画を。
「まず、地球温暖化対策への自主的な取り組みと貢献のアピール活動を進める。そのためには、鉄スクラップを使用することでどの程度CO2が削減されるかといったことを業界できちんと調査し、把握しておく必要がある」
「同様に鉄スクラップの集荷から加工、出荷までの工程において、我々がどの程度CO2を排出しているか、またどの程度削減できるかといった調査を環境委員会中心に、早稲田大学と連携して行っていくことにした」
――5月末には国際化推進へ向けて、工業会と韓国鉄鋼協会の交流会が開催された。
「日本の鉄スクラップ需給状況や検収規格、業界の実態などを調査するために来日された。韓国鉄鋼協会はPOSCOや現代製鉄など鉄鋼メーカーが主体の団体だが、その組織には韓国鉄スクラップ協会も加入している。交流会の中で、日韓両国の鉄スクラップを取り巻く環境の変化を実感できたことが収穫だった」
「例えば韓国では日本はまだまだ輸出余力があると認識しており、日本からの鉄スクラップ供給を期待している様子であったが、統計数値を使って説明し、日本からの輸出はピークアウトした可能性が高いこと、日韓双方に今後スクラップ需要が相当増加すること、全体的なバランスとして、需給が非常にタイトな事を認識頂けたと思う」
――さらなる国際化へ向け、具体的な活動計画は決まっているか。
「今後、韓国鉄鋼協会と年2回ペースで情報交換の場を持つとの合意にも達した。日本の近隣に韓国や中国などがあり、グローバルな視点・情報を我々自身知る必要がある。そのためにもこの1、2年で各国金属リサイクル団体代表に呼びかけ、『アジアリサイクルフォーラム』(仮)を開催し、日本の工業会発信の情報作りをしていきたい」
――その他の事業計画は。
「広報活動を強化・充実させる。例えば、各委員会の事業計画を委員長によって記者会見などで報告してもらう。また、会計事務所や法律事務所など外部を入れて組織の透明化を進めて、本年度から厳格・統一化した規則や会計基準などを実施する。業界の人材育成へ向けては、これまで各委員しか参加できなかった委員会のプロジェクトごとに参加者募集してもらい、活躍の場を提供する計画だ」