ＳＵＳ３０４系（18クロム―８ニッケル）ステンレススクラップ市況は市中価格が３―４万円前後上昇し、約１年前の２００６年１月からの上げ幅は約30万円に達した。ロンドン金属取引所（ＬＭＥ）ニッケル相場の高騰に加えて、国内ステンレスミル各社が積極的なスクラップの手当てを続ける一方、生産能力が拡大する中国向け輸出が活発化していることが要因。供給サイドの販売姿勢も依然として強気で、「メーカーへの供給不足が続く」（流通）と見る向きが多い。関東地区では新断トン４２万円と初めて40万円を突破している。

　 おう盛な製品需要を背景に、国内ステンレスミル各社はフル生産を続けている。一時、円高に傾いたため、製品輸出の兼ね合いから原料であるスクラップ購入価格の値下げに動いたが、再び円安に向かい値下げの動きは沈静化。「スクラップ価格の高騰はもちろん懸念しているだろうが、数量確保が最優先となっている」（商社）ため、市況は強基調で推移している。

　 日本からの輸出が急速に拡大していることも、流通価格の高騰に大きく影響している。とくに中国向けが大幅に増加。昨年の中国向け輸出量は05年の３万２８９０トンを大幅に上回る10万７６５０トンを記録、過去最高となったが、今年もその勢いは続いている。

　 咋年から今年にかけて大きな下げ場面を迎えず、国内ミルと輸出向けの値上げが続いてきたため、発生元から集荷先、集荷先からヤードと流通の各段階への出荷が滞っており、エンドユーザーであるミルへの出荷が伸び悩んでいる状況だ。

　 相場の指標となるＬＭＥニッケル現物価格は、現地15日時点で過去最高のポンド当たり22・36ドルを記録。中国の買いがおう盛なこと、投機が進んでいることなどの情報が散見しているが、同日のＬＭＥ在庫は全世界の１日の消費量に満たない３０００トン台の低水準で、「供給不足の状況が続いていることは間違いない」（商社）との見方もある。