丸紅テツゲン(本社=東京都新宿区、大林啓二社長)は、2011年度の経常利益を16億―17億円と過去最高利益を目指す。鉄スクラップ事業と合金鉄事業は供給網の拡充を図り、昨年度から進めているレアアース事業は事業化へ向け着実に準備を進めていく。11年度の業績目標や事業動向などを大林社長に聞いた。
――10年度の業績から。
「全社ベースの業績は売上高が09年度比約17%増の1400億円、経常利益は5%増の15億円で過去最高だった。日本国内がリーマン・ショックから立ち直り、経済が回復基調にあった中、主に合金鉄事業が非常に好調で増収増益に貢献した」
――11年度の業績目標を。
「東日本大震災が起こる前に策定した数値だが、11年度は売上高1700億―1800億円、経常利益は過去最高の16億―17億円を目標としている。ただし、震災により東北地区の電炉メーカー3社が被災し操業停止となっただけではなく、自動車の生産台数が大幅に落ち込むなど、当然だが4―6月期に関しては当初と違うシナリオとなった。先行きは不透明だが、今のような状態がずっと続くとは思わない。復興需要が少しでも表に出てくれば状況は変わるのでは。企業として利益の確保は当たり前のことだが、当面はNPOの精神で、当社の事業が被災地の復興・復旧へ少しでも貢献できればという気持ちだ」
――鉄スクラップの取扱量に関して。
「10年度は09年度比4%減の約250万トンだった。中国の大幅な輸入減や東日本大震災などが影響した。取扱量の内訳は国内向けが200万トンで、貿易(輸出、輸入、三国間の合計)が50万トン。昨夏より為替が急激に円高となったが、鉄スクラップの輸出を得意としている当社にとっては向かい風だった。11年度の目標値は国内と貿易合わせて270万―280万トンに設定している」
――鉄スクラップ事業における11年度の重点課題は。
「10年度と変わらないが、市中ヤードディーラーとの連携強化と、全国11カ所にある船積み拠点を活用した供給網の拡充だ。供給網を拡充し鉄鋼メーカーの要望に応えていきたい。船積み拠点に関しては、当社にとって都合の良い用地が見つかれば、すぐにでも増設したいと考えている。国内全体の鉄スクラップ需要が低調に推移している中、当社が開設している船積みヤードをきっかけに市中ヤードディーラーとのアライアンスを一層強化していきたい」
――鉄スクラップの海外市場をどう見る。
「韓国や中国、台湾は当面、日本からの鉄スクラップ輸入を継続するとみているが、中国に関しては先行きが不透明な部分が多いため注意しなくてはならない。中長期的には、成長が著しいベトナムが日本の新たな輸出先になるとにらんでいる。将来的には現地への駐在員派遣や、揚げ港ヤードの開設も視野に入れたい」
――合金鉄事業は設備投資も視野に入れている。
「合金鉄事業に関しては11年度、フェロクロムやモリブデン、ニッケルなどの取扱数量を着実に増大させていきたい。トレードが安定的に行えるよう、必要に応じて設備投資も視野に入れている。ただ大事なのは、単純に合金鉄の製造設備を立ち上げたりするのではなく、使用原料の確保も視野に入れた上で、設備を有効に活用しながら競争力のある供給網を構築することだ」
――昨年度から事業化へ向け準備を進めている、レアアース回収事業の進ちょくを。
「新規鉱山から採掘されるレアアースの取り扱い、鉱石の残渣からの回収、ハイブリッド車などに採用されているモーターからの回収と3本立てで準備を進めているが、それぞれ多少時間を要しているが着実に進ちょくしている。モーターからの回収は現在、数社と共同で実験段階に入っている」
――数年前から、トンネル工事に使用する裏込材の技術や材料を販売しているが。
「当社が取り扱っている裏込材には劣化の少ないベントナイト系遮水材が含まれており、これまでトルコのボスポラス海峡トンネル、ドバイの地下鉄工事に採用されてきた。東南アジアを中心とした地下鉄、新幹線案件で高いポテンシャリティーがあり着実に実績を伸ばしている。レアアース回収事業と併せて、鉄スクラップ、合金鉄に次ぐ第3の柱事業となるように育てていきたい」