国内の鉄スクラップ需要は昨秋以降、メーカーの減産を受け低水準で推移。その一方で発生についても景気の低迷により回復の兆しが見えていない。足元は主に輸出価格が市況をけん引しており、従来以上に『鉄スクラップの国際商品化』が鮮明になっている。こうした状況を流通サイドはどのようにとらえているのか。日本鉄リサイクル工業会の会長をはじめ副会長、各支部長に現況や今後の見通しなどを聞いた。
――鉄リサイクルを取り巻く現況について。
「昨年の大きな相場の上げ下げを経て、鉄リサイクル業界の特色と社会的・経済的役割、そしてその位置づけがさらに明確化されたのではないだろうか。鉄スクラップはグローバル商品であると同時に、低炭素社会実現に必要不可欠な『地上資源』としての位置づけが広く社会に認識された」
――国内需要の減退により、その貴重な『地上資源』の鉄スクラップ輸出が急増している。
「それは鉄スクラップが完全に国際商品化したということ。世界全体での鉄スクラップ消費量のうち、約20%が輸出・輸入によって、貿易取引されたもので占められており、今後は30%台へと向かう可能性もある。『地産地消』と言われてきた鉄スクラップだが、価格動向にかかわらず、地産世界消費に大きく変化した。世界同一市場においてリアルタイム取引が実施されているのが現状だ」
「もちろん国内、地域内の需給が最優先で、日々の集荷は各地域で行っているが、同時に日本は世界第2位の鉄スクラップ輸出国であり、アジアに限定するとナンバーワンの供給国という貴重な存在。ただし、輸出入というのはあくまでも国境を越えるかどうかだけの問題であり、アジア市場全体の需給をプール計算でとらえる事が肝要かと思う」
――輸出増に伴い、アジア各国など海外とのより深い相互協力、連携などが必要となっている。
「日本は1980年代以降、製品輸出と並行して国際分業、技術移転などソフトウエアを提供して自国の発展にもつなげてきた。それと同じように鉄リサイクル業界も集荷方法や工場・拠点の造り方、リサイクル率の向上へ向けた技術やノウハウ、つまりリサイクルのソフトをアジア各国に伝えることにより、日本国内での鉄スクラップ発生・流通量が頭打ちとなっても、アジア圏でのビジネスの発展チャンスが残されている」
「日本とアジア各国がパートナーとして協力していけば、そのルートを使って他のリサイクルビジネスも行えるのでは。とくに自動車・家電リサイクルなどについては、将来的に協業へ向けて検討する価値はあるだろう」
――一方、鉄スクラップについては検収面などの課題もある。
「韓国メーカーではすでに、日本での調達先を指定するような動きもある。しかし、ユーザーとサプライヤーの双方が納得できるような品質、商品に対するアジア基準の規格・検収は必要だと考えている。同時に、われわれの取り扱う商品が限定された国内の各地域でのみ消費されるのではなく、国際商品であることに加えて、とくにアジアでは重要な供給源である事を再認識する必要がある。つまり、われわれの業の果たすべき役割がより大きくなった分、それに見合った企業としての行動規範が必要であるし、コンプライアンス、組織としての透明性をさらに向上させていくべきだ。国内はもちろんのこと、海外からも高い評価を得るために、いま一度、真剣に業界全体で取り組むべき課題と考える」
――海外との連携、情報交換などの強化へ向けて、今後の取り組みについて。
「韓国鉄鋼協会、中国廃鋼鉄応用協会とはそれぞれ個別に面識はあったが、三カ国が一堂に会する機会はなかった。この東アジアの基軸である三カ国が日本の呼びかけによって日本で会合を開いたことに大変重要な意味があると思う。東アジアリサイクル会議の開催と全国大会への中国・韓国の主要機関招へいという形で、昨期に掲げた『アジアのリサイクルビジネス発信基地』としての第一歩を踏み出せた。東アジアリサイクル会議ではアジアの鉄鋼生産動向、鉄スクラップ需給について情報交換などを行ったが、次年度以降は全国大会などに台湾、アメリカ、EU圏の主要リサイクル機関に参加を要請したい」
「現在の低迷期がどれくらい継続するか不明だが、3年程度のスパンで考えれば、アジアは依然として世界経済成長の中心軸。この低迷期でも業界のたくましさ、堅牢さはすでに認識されている。今後、日中韓を基軸としたアジアの発展に寄与するためにも、日本のリサイクル業界が果たすべき役割をより明確にしていきたい」
※以下のインタビュー記事は日刊産業新聞に掲載しました。
大西哲也副会長/メタルワン執行役員
西川明副会長/西川商工社長
北海道 杉山博康支部長/マテック社長
東 北 高橋文一支部長/今弘商店社長
中 部 伊藤弘之支部長/大成金属社長
関 西 金村成健支部長/京阪メタル社長
中四国 平林久一支部長/平林金属社長
九 州 池尻徹男支部長/九州メタル産業会長