チタンスクラップの市況が低迷している。ステンレス・特殊鋼向けの需要が低迷し、市中発生が乏しい中でも、現物が荷余りを起こしている。海外合金鉄メーカーの引き下げ圧力により、純チタン系スクラップの国内実勢相場は、8年ぶり安値に下がった。
チタンスクラップの主用途である鉄鋼添加向けは、国内大手ミルの買い気が1年以上も戻らないまま。輸出も振るわず、米国・欧州の合金鉄メーカーは安値ラインを設け、それ以上では買わない姿勢を決め込んでいる。
ロイター社調べの低品位スポンジチタンの欧州相場は、ここ1年以上にわたりキロ10ドル強を付けているが、「国内外の実勢は3―5ドル」(特金スクラップ問屋)と言われる。これは現在、国際指標で6ドル強を付けているフェロチタン(チタン70%)を下回る水準となっている。
チタン展伸材の民生用需要は低迷しているため、国内のスクラップ発生は少ないが、市中在庫は増加傾向。今年初めにはスポンジチタンの供給不足と、スクラップ値上がりを見越した思惑買いも一部出ていたが、その在庫も掃けずに塩漬け状態となっている。
2010年後半からは、韓国からのスクラップ輸入も始まっていた。POSCOがチタン展伸材の生産を始め、その工程発生スクラップが流れたものだが、「今は引き取り手がない状態」(同)。財務省の貿易統計によると、昨年末に月200トンを記録した「チタン屑」の対韓国輸入量だったが、今年9月は10トンに落ちた。