再生鉛原料の廃バッテリー調達難が日を追って深刻化している。鉛相場下落で集荷業者が売り惜しみ態勢をとり、市中では今もキロ70円台の売値提示が残る。二次精錬筋は原料不足のため、バッテリー増産期を迎えながらも、操業率が5―6割に落ち込んでいる状態。需要家の増量要請に応じられず、地金輸入も検討されている。業界からは行政当局に対策を求める声が出ている。
ロンドン金属取引所(LME)の鉛相場は、9月初めから今月中旬までに約3割急落。廃バッテリーの市中取引価格の中心値は、キロ80円前後から60円台に後退したとみられるが、実際の売り買いは少ない。関西地区では「70円で買う輸出業者があるので、65円でも手に入らない」(スクラップ業者)といわれ、二次精錬メーカーが購入しても採算を大きく割る高値提示が残っている。
ある商社関係者は「回収業者の資金力が付き、塩漬けできる体力はある」と指摘する。現物を抱える扱い筋は相場反発を期待して、高値の引き合いがない限り放出しない構えだ。安値圏がかなり長引かないと、放出は望めないようだ。
二次精錬メーカー各社は、これまでも低操業を強いられていたが、相場下落が始まった先月から原料調達難に拍車がかかり、さらに操業率を落としている様子。中には5割近くまで落ちているメーカーもあり、採算ラインどころか操業維持ラインが迫っている。
原料に鉱石と廃バッテリーを両用する一次製錬メーカーも、原料確保に苦しんでいる。下半期(2011年10―12年3月)の大手一次製錬各社の鉛生産計画は、前年同期比8%増の11万1000トン。10月からフル生産に入ったバッテリーメーカーからは増量が要請されているが、増産に必要な廃バッテリーの確保難で、「生産計画に届かないかもしれない」(製錬メーカー関係者)と話す。
国内不足分はカナダや豪州からの輸入増でカバーするよう検討されているが、スポット契約で輸入すれば単価は割高。バッテリーメーカーの利益圧迫要因となりかねない。
日本から韓国には毎月およそ4000トンの廃バッテリー、鉛容量換算で約2000トンが流れているが、一方ではほぼ同量の鉛・鉛合金が輸入されている。高値買いする韓国筋に対して打つ手がないが、「需給構造のねじれの原因となっている輸出を認可している行政当局には、少しは対策を考えてほしい。このままでは国内の鉛リサイクル業界が衰退する」(二次精錬メーカー幹部)との声もある。