銅相場が上昇する中、輸出向け銅スクラップは市況低迷が継続している。最大の輸出相手国である中国の需要が伸びず、急速な円高ドル安進行や中国税関の課税額上昇も重しとなっている。年末にかけては中国扱い筋の資金繰り悪化も予想され、年内にスクラップ輸出を取り巻く環境が改善することはなさそうだ。
代表的な輸出品種である込み黄銅や雑電線の市中相場は夏以降、銅相場の上げにほとんど反応していない。込み黄銅(鉄などの混入がないもの)の輸出筋買値は、足元キロ370―380円。9月初めと比べて10円程度の上昇にとどまる。
この間に国内銅建値は66万円から76万円まで上昇。黄銅削り粉など、国内需要家向けの黄銅原料が50―60円切り上がっているのと比べて、込み黄銅は大きく見劣りする。
原料扱い筋からは、「込み黄銅は輸出価格と国内製錬メーカーの買値の差がほとんどなくなってきており、製錬向けの動きが拡大するのでは」(大手直納問屋)との見方が聞かれ始めている。従来であれば、製錬メーカー買値は輸出価格を数十円下回る。
背景にあるのは、依然として回復しない中国の銅スクラップ需要だ。中国は安定した経済成長に伴い、資源需要が旺盛だが、「銅スクラップは伸銅メーカー、スクラップ業者とも在庫が高水準のまま」(大手輸出筋)。政府の環境対策による、工場への電力制限が影響している地域も多いという。
このため中国の銅スクラップ相場は伸び悩む。これに円高が加わり、「中国の扱い筋は日本での買い付け価格を銅価に反してむしろ下げたがっている」(同)との指摘が多く寄せられる。
国際的な銅相場高を受け、中国税関が輸入時に増値税17%を課税するスクラップ評価額を引き上げていることも影響している。関東の大手輸出筋は、「10月初めの国慶節休暇前から引き合いが全く戻らず、足元は本年で最も取扱量が少ない」と話す。
12月になると、中国では借り入れた運転資金を年末に銀行へ返済する動きが出てくる。実需低迷に資金的な制約も加われば、年内に輸出環境が改善する可能性はほぼない。
本年の日本の銅スクラップ輸出量は、1月を除いて3万トンを超えておらず、2003年以来7年ぶりに年間輸出量が30万トンを割り込む公算が大きくなっている。