製錬、伸銅メーカーが使用する銅スクラップの輸入比率が上昇している。景気悪化の影響で国内のスクラップ発生量が少ないため、輸送コストがかさむ割高な輸入品も積極的に手当てしている。ただ、主要な輸入相手国である米国もスクラップの発生が減少しており、仕入れ先を中東や欧州にシフトする傾向も見られる。
銅スクラップは、伸銅向けの高品位品から製錬向けの低品位品まで、軒並み発生が低調。背景には、景気悪化による中小規模の加工工場の低操業や解体物件数の減少がある。銅相場下落で原料扱い筋に在庫評価損が発生し、売り渋りの動きが出たことで、5月以降は発生減少に拍車が掛かっている。
製錬メーカーは鉱石を原料とするが、炉の温度を調節する冷材として銅スクラップが必要。メーカー各社は国内の不足分をカバーするため、割増金(プレミアム)をつけるなどして、輸入品の手当てを増やしている。「従来はほとんどを国内から調達していたが、足元は3割強に輸入比率が上がっている」(大手製錬メーカー)。
伸銅品原料は地金とスクラップ。関東の大手板条メーカーは原料の半分以上をスクラップが占め、その一部は輸入品だ。輸入数量自体はとくに増えていないが、「国内の集荷が減っているため、相対的に輸入比率が上昇している」(資材担当者)という。
伸銅メーカーにも、スクラップ輸入を積極化する動きが出てきている。しかし、輸入量が最も多い米国産も景気悪化で発生が少なく、「オファーを出してもなかなか手当てできない」(原料商社筋)のが実情。とくに高品位品の手当ては難しく、メーカー各社は地金使用量を増やして生産を維持している。
財務省発表の輸入通関速報によると、5月の銅スクラップ輸入量は8108トンで、景気悪化前の2008年上半期の5000―7000トンを上回った。このうち米国からの輸入量は1148トンで、総輸入量の14%。08年上半期は1300―1900トンの輸入があり、24―27%を占めていた。
一方で増加しているのは中東諸国や欧州だ。5月はサウジアラビアなど中東8カ国から1773トン輸入しており、08年上半期の500―1000トンと比べてほぼ倍増。英国など欧州4カ国からの輸入量は1071トンと、過去20年で初めて1000トンを突破した。