メーカー圧迫する“原料ロス” 価格高騰
07年コストは220億円/原燃料・副資材上昇を負担
日刊産業新聞 08/1/30
2004年後半から続く原料価格の高騰で、伸銅品の原料ロス分のコストが増加している。産業新聞の試算によると07年に発生した原料ロス分のコストは約220億円で、03年比で約155億円上昇した。石油や副資材、輸送費などのコストも増加しており、伸銅メーカーの利益を圧迫している。
原料ロスは投入した原料のうち、溶解から製造までの工程で消失してしまうもののこと。原料ロスの割合(重量比)は銅管で1%、銅板条で3%、黄銅棒で3―5%程度といわれる。
以前は加工賃(ロールマージン)とは別に請求していたが、メーカー同士の過当競争が激化してからは各社とも次第に原料ロスのコストをロールマージンの中に含める方式に変更。実質的にメーカーが原料ロスのコストを自己負担することになった。ただ、当時は原料の銅価格が低位安定しており、自己負担でも収益に大きな影響はなかった。
だが、04年下期から銅価は上昇。07年の国内銅建値(年間平均)は上昇前の03年に比べ3倍のキロ880円に、黄銅削り粉買値も3・4倍の660円になった。このため03年時に伸銅品全体で65億円だった原料ロスのコストは、07年には220億円まで拡大した。
とくに大きな影響を受けたのが黄銅棒。06年には一時、原料ロスのコストがロールマージンの半分以上を占めた。激しい過当競争の影響で加工賃が他の伸銅品の2―4割程度しかないとみられるためで、原料ロスのコスト増は黄銅棒メーカーにとって深刻な利益圧迫要因となっている。また、ニッケルや錫など銅以外の非鉄金属も値上がりしたため、これらの金属を使用する銅合金条でも原料ロスのコストが拡大している。
黄銅棒メーカーは04―06年にかけ、合計でキロ20円程度ロールマージンを引き上げたが、加工ロスのコスト全額を賄うにはほど遠い状況。板条メーカーも06年から原料ロスの転嫁交渉を本格化させたが、交渉は長期化している。
原油などの燃料費やダイスなどの副資材費、輸送費など、原料ロス以外のコストも上昇している。とくに燃料コストは伸銅業界全体で03年より20億円増加したとの試算もある。このため伸銅メーカーにとってロールマージンの値上げは必要不可欠な状況になりつつある。
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