国産アルミベースメタル(ADC10相当)の原料となる廃自動車エンジンの発生量が、関東地域で一段と細っている。使用済み自動車の解体車両の減少などで、もともと発生が低迷していたところに「廃自動車エンジンをマレーシアに輸出する動きが広がっている」(扱い筋)。こうした事態を受けてアルミ再生塊メーカーは、深刻な原料不足に直面、稼働率が50%以下に落ち込み赤字操業を強いられるメーカーも出ている。
アルミ再生塊メーカーが廃自動車エンジンを調達する自動車解体業者は、廃車台数の減少を受けて「処理台数が例年の半分以下に落ち込んでいる」(関係筋)。背景には、国内自動車販売台数の減少に加え、関東地域で発生する使用済み自動車が解体車両に回されず、東日本大震災の被災地へ中古車として出荷されるケースが増えていることがある。
さらに「解体業者が廃自動車エンジンをマレーシアへ輸出する動きが拡大」(関係筋)。マレーシアは中古エンジンおよびエンジンスクラップの需要が旺盛で、日本国内よりも高値取引されていることが理由とみられる。マレーシアは「エンジンだけでなくホイールなど自動車の廃車部品が日本など先進国から集まる。国内市場で販売するとともに、ベトナムやインドネシアに輸出している」(商社筋)。
原料の発生薄と海外流出で国内アルミ再生塊メーカーは深刻な原料不足に陥っている。南関東の有力メーカーは前年、月平均2000トン強を処理。だが今年5月以降、仕入れ数量は1000トン程度にまで減退。「7月は800トンを集めるのがやっとだった。8月はお盆休みの影響で、さらに集荷量が減少するのではないか」(メーカー筋)と見通す。
このメーカーは原料・製品在庫の品薄を理由に7月後半にアルミベースメタルの供給を停止。8月前半は長年の取引のある需要家を中心に少量を販売する。稼働率は50%を下回り、固定費の負担増が収益を大きく圧迫。「数カ月間赤字続きで体力は限界」。すでに人員削減に着手したものの、「長期的に原料の発生回復は見込み難い。生産体制をさらに縮小する必要がある」。