製錬メーカー向け銅スクラップ(下銅)の需要が、大きく落ち込んでいる。東日本大震災で東北、関東の製錬工場が操業を停止。商社や原料問屋は、通常操業を続ける関東以西の製錬工場に納入先をシフトするなど、売り先の確保に奔走するが、メーカー各社の受入能力には限界があり、全量を振り分けるのは難しい。関東地方を中心に今後、下銅が供給過剰になる懸念が浮上している。
下銅は、銅製錬メーカーが炉の温度調節のための冷材として使用する銅スクラップ。95%以上の高品位のものから50―60%の銅合金、50%以下の銅滓(スラッジ)まで種類は幅広い。
震災被害により、三菱マテリアルなどが出資する小名浜製錬所(福島県)が操業を停止。同工場向けの下銅供給は完全にストップした。
国内銅製錬最大手のパンパシフィック・カッパーでも、日立精銅工場(茨城県)の操業が止まっている影響で、佐賀関製錬所(大分県)や玉野製錬所(岡山県)での下銅購入量を減らすとみられている。
三菱マテリアルは、下銅の購入契約を結ぶ商社や原料問屋に対し、当面は直島製錬所(香川県)に納入先をシフトするよう要請しているもよう。ただ、「直島の受け入れ余力は小さく、小名浜への納入分をすべて受けてもらうのは無理だろう」(関東の直納問屋)との見方が寄せられる。
直島は小名浜と異なり、受入時のスクラップの荷姿に制限がある。船舶輸送により運賃負担も増すため、問屋としても、どの程度対応していけるのか頭を悩ませている。
他社向けの販売ルートを模索する動きも一部ある。ただ、通常操業を続ける住友金属鉱山の東予工場(愛媛県)なども、「当面の必要数量の集荷にはめどが立っており、増量できる状況ではないだろう」(大手直納問屋)との見方が強い。
日立精銅工場は4月中の稼働を予定しているが、小名浜製錬所は再開にめどが立っていない。足元は銅スクラップ全般の発生が少なく、荷余り状態には陥っていないが、今後は余剰気味になる可能性が高い。
製錬各社は需要減に合わせ、4月から下銅の購入価格条件を引き下げる方向。購入価格に上乗せする割増金(プレミアム)の減額などにより、各社トン当たり数千円から2万円程度下げるとの見方がある。需給緩和とメーカー買値低迷で、市中相場も値下げ圧力が強まりそうだ。