三菱マテリアルは7日、使用済み家電製品から希土類(レアアース)磁石を回収して、再資源化する技術を開発したと発表した。エアコンのコンプレッサーや洗濯機のモーターから、ネオジム―鉄―ボロン系磁石を効率的に回収できる分解プロセスを開発。今後は分解を自動化することで、リサイクルコストを削減し本格的な事業化をめざす。そのために回収した磁石を合金メーカーに供給するための形状なども検討する。
2009年度から経済産業省の補助金を受けて、同技術の調査を実施。本年度は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として研究開発を続けることが決定した。パナソニックとの共同出資会社であるパナソニックエコテクノロジー関東(茨城県)などの協力を得ながら、さらに効率的な分解と磁石回収プロセスを開発する。
三菱マテリアルは、大手家電メーカーとの合弁事業として、家電リサイクル事業を5社6工場で展開している。09年度は家電リサイクル工場で処理されている使用済みのエアコンと洗濯機を対象に、ネオジム磁石を搭載した製品の調査を実施。エアコンで約6%、洗濯機には約1%に同磁石が使われていることが分かった。
現在販売中の製品の場合は、省エネ化を図るためにネオジム磁石の採用比率が増加している。日本冷凍空調工業会によると、07年度に国内出荷されたエアコン740万台のうち、約60%に搭載されているという。これらがリサイクルされる10年後には、洗濯機も含めてネオジム磁石を年間400トン以上回収できるとみている。
磁石の主原料となるネオジムと、性能を高めるために添加するジスプロシウムなどのレアアースは、中国が世界生産の90%以上を占めている。日本はほぼ全量を中国からの輸入に依存している。
しかし中国政府は内需拡大と資源保護の観点から、輸出量を大幅に削減。最近は対日輸出の禁輸が大きな問題として取り上げられている。三菱マテリアルは傘下の家電リサイクル事業を活用したリサイクル体制を構築し、レアアースの安定供給を図る考え。