財務省が29日発表した貿易統計によると、10月の銅スクラップ輸出量は前年同月比38%減の1万4786トンで、2003年2月の1万814トン以来、8年8カ月ぶりの低水準となった。9月下旬の海外銅相場急落を受け、中国筋が買いを控えたことが主な要因。高値玉を持つ国内輸出筋と、先安を警戒する中国筋との間で、値段交渉が成立しにくくなった背景もある。輸出単価も前年同月比キロ21円安の213円で、09年10月以来の低水準となった。
9月下旬には海外銅相場が急落。ロンドン金属取引所(LME)の銅現物セツルメントは、9月1日のトン9101ドルを高値に、10月3日には6795ドルまで下落し、1カ月間で約25%の大幅安となった。
ある大手輸出筋は、「9月下旬には相場急落で中国筋の先安懸念が高まり、買いが一斉にやんだ」と話す。
海外相場は8月以降下落を続けた。このため、9月の輸出量は4カ月ぶりに2万トンを割り込み、32%減の1万7875トンだったが、10月はさらに減少した。また国内の市中発生も同時に減少したため、「売りたいが、売るスクラップがなかった」との声も聞かれた。
その他の要因として「中国の金融引き締めで資金がショートし、輸入を控える業者もある」(大手輸出筋)との指摘もある。また、9―10月は東京為替TTSが1ドル=77円台で推移し、円高ドル安も輸出減の一因となった。
10年2月にも1万5212トンの低水準を記録しているが、例年1―2月は日本の正月と中国の旧正月が続くため、輸出量が減少する傾向にある。
「9―11月は例年なら輸出量が増える時期。中国筋の先安懸念は深刻だ」と、ある輸出筋は指摘する。今後の輸出動向は、「少なくとも、来春の旧正月明けまでは低水準が続くのではないか」(複数の輸出筋)との見方が強い。