中国の主要な雑品輸入港である台州・寧波で、滞船が発生しているもようだ。先月以降、日本から中国へ雑品輸出した際に、放射線許容量を超過する事例が複数発生したことから、検査方法が厳格化され、1日当たりの検査件数が大幅に減っているためとみられる。当面は日本から輸入するスクラップへの監視強化体制は解除されなさそうで、輸出低迷の長期化が懸念される。
浙江省の台州市と寧波市は、日本が輸出する建築解体物、廃家電などが混在する雑品スクラップの主要な輸入港。複数の輸出筋が、「台州・寧波で滞船が発生している」と話す。滞船の規模は不確かだが、「40隻程度と聞いている」(大手輸出筋)との情報がある。
東京電力福島第一原発の放射能漏れ事故を受け、中国は先月から輸入時の放射線検査を強化。この結果、日本の雑品バラ積み船で中国の環境保護基準の放射線許容量(大気中の放射線量プラス0・25マイクロシーベルト)を超過する例が台州・寧波で2件、張家港で1件確認され、検査態勢を厳格化したことが影響しているようだ。
これまでは、荷揚げした雑品の品質検査を山積みの状態で行っていたが、現在は「より詳細な放射線検査を実施するため、高さを1メートルにして広げての品質検査を徹底している」(日中商品検査)。これにより、台州・寧波で雑品バラ積み船の1日当たりの荷揚げ件数は、「通常の10隻程度から、3―4隻に減っている」(大手輸出筋)という。
中国の国家質量監督検験検疫総局が発布する出入国検験検疫業界基準(SN)では、「金属スクラップの検査時の積み重ね厚さは、1メートルを超過してはならない」と規定されている。ただ、実際には時間がかかり過ぎるため厳守されてこなかった。
滞船の発生により、日本―中国のバラ積み船需給は引き締まっている。福島第一原発の放射能漏れが収束に向かわなければ「中国の検査体制が緩むことはなさそう」(大手輸出筋)との見方があり、輸出業者は雑品輸出の長期停滞につながりかねないと警戒感を募らせる。
輸出各社は買い止めや単価抑制の姿勢を継続している。関東地区の輸出業者の雑品買値は、東日本大震災が発生する前の先月初めにはキロ50円前後だったが、足元はおおむね30―40円。「スポットの売り込みは基本的にお断りしており、買えても30円以下」(大手輸出筋)との声も聞かれる。