環境負荷物質の鉛を含まない鉛フリーはんだが普及するにつれ、そのリサイクルが問題になっている。従来の鉛入りとは再精錬条件が異なるため、鉛フリー化に技術的・資金的にも対応できず、廃業・撤退する業者が相次いでいる。発生スクラップは貴金属の銀を含むにもかかわらず、そのまま多くが合金の添加材として使われているのが現状だ。しかし、錫の国際相場が高騰し、生産国も供給を引き締めていることもあり、錫原料確保のためにもリサイクルの必要性は高まっている。

　 鉛フリーはんだの普及は、高信頼性の自動車や半導体、認知が遅れている産業機械分野を除いて一巡し、実装率は60―70％に達しているといわれる。それに応じて発生するはんだスクラップ（酸化物）も鉛フリー化している。

　 しかし、３％の銀を含む鉛フリー原料を再精錬する場合、鉛入りと比べて融点が高いため高温下で行わなければならず、鉄・亜鉛などの不純物や溶存酸素を取り除く技術も難しくなる。そのため再精錬の溶解は密閉された真空中で行い、最終処理をする場合は電気精錬施設も必要となってくる。

　 現在、国内で鉛フリーはんだのスクラップ再精錬を行っているのは、大手はんだメーカーの自社精錬か、もしくはその系列・提携関係にある精錬会社に限られている。はんだメーカーはひも付きの大手需要家から、製品納入と同時に発生スクラップを引き取り、再精錬に委託している。

　 最近では台湾メーカーの鉛フリーはんだの輸入攻勢もあり、国際的な価格競争力が試される時期に差しかかっている。製品の競争力を付けるためにも、この再生「鉛フリーはんだ」の使用は欠かせなくなっている。

　 それに対して従来の再精錬業者は、高齢化に加えて再生原料の鉛フリー化に対応できず、廃業やはんだリサイクルからの撤退が相次いでいる。排煙などに対する環境規制が厳しくなっていることもあり、「燃料も上がっているし、零細規模なので追加投資負担に耐えられなくなっている」（はんだメーカー）。

　 鉛フリーはんだのドロスは、大手メーカーに回収されるもの以外は青銅合金の添加用に使われる。その価格は「錫より１００―２００円安い値段で入手できる」（鋳物合金メーカー）ともいわれ、銀を約３％含んでいるにもかかわらず錫単独の地金価格より低く、資源の有効利用の観点から惜しむ声もある。

　 しかし、錫の高価格化に伴い、再生ニーズが高まっているのは確か。これを商機と見て国内のみならず、中国など海外に進出する関係業者も現れており、日本の再精錬技術が活躍する場が広がる可能性もあるだろう。