伸銅品の関東地区市中相場が強含んでいる。指標となる銅建値が高騰しているためで、代表品種の黄銅丸棒（直径25ミリ）の売り唱えは足元でキロ８００円台後半になっている模様。ただ、荷動き低迷を背景に市中はノミナル化しているとの指摘もあり、実際に浸透するのは５月連休明けになる可能性が高い。

　 自動車や半導体、文具、水栓金具など幅広い分野で部品材料として使われる黄銅丸棒25ミリの市中相場（仲間売り店頭渡し）は８４０―８７０円程度まで切り上がっている。２月につけた直近安値７８０円から10％程度上昇しており、年初来高値をつけている。銅管や板条の価格も強基調で推移している。都内のある銅管流通ではキロ20円程度値上げする予定。「値上げは今年に入って初めて」（流通筋）だ。

　 背景には銅建値の急騰がある。１、２月に弱含んでいた銅建値は３月から再び上昇基調に転じた。４月以降は棒上げの展開が継続。23日にはトン１００万円に乗せ、昨年５月15日の史上最高値に並んだ。海外銅相場の上昇に為替の円安が加わったためで、市中では「投機筋は一度利益確定売りを行っており、今後も相場をつり上げてくるだろう。今回、建値が週明けで変わったのも一段高の可能性を見越してのことではないか」（別の流通筋）との見方が強まっている。

　 ただ、足元の荷動きは閑散としている。「必要なものは売れており、荷動きが止まっているわけではない」が「新年度に入っているのに緩慢な荷動きから抜け出していない。去年の同じ時期のように慌てて買う動きが全く見られない。成約も減っている」（同）。１、２月の銅価を見て昨年より低めで予算を組んだ需要家は手当てを可能な限り伸ばしており、仲間流通の中でも現在の価格を追いかける動きは少ない。

　 流通は「今後、高値在庫が入ってくることを考えると相場は上げざるを得ない」（同）との考えを崩していないが、５月連休後の銅価が不透明な中で、現状はノミナル化している。ただ、連休後も建値が高値を維持していれば、価格引き上げの動きは本格化しそうだ。