田口金属(本社=東京都新宿区中落合1―20―4)は、自社開発したネオジム磁石抽出装置がこのほど稼働開始した。総和工場(茨城県古河市西牛谷315)で処理するエアコンのコンプレッサーからネオジム磁石を抽出し、国内でリサイクルする。目標とする数量はネオジム磁石ベースで月500キロ。すでに複数の大手磁石メーカーから引き合いがあり、今後販路を確立する。
原料となるのは、コンプレッサーのコアを取り外し、ローターを露出させたもの。これまでは鉄スクラップとして販売していた。
総和工場に導入されたネオジム磁石抽出装置は、脱磁装置と冷却装置、ローター抜きプレス機の3つからなる。まず脱磁装置により、2つのバーナーでコンプレッサーの表面を400度で1分半から2分熱し脱磁する。その後、原料はコンベヤー上で水冷却される。次にローター抜きプレス機でローターを取り外した後、磁石を取り出す仕組み。プレス機は油圧式で3方向から押し出す。「あらゆる形状のローターに対応できる」(小村旬・技術開発室長)。脱磁装置の燃料はLPガスを使用し、低コストの操業が実現した。
現在、人員の配置など最適生産体制を模索しており、体制が決まり次第、早期に営業運転に踏み出す。
同社は経済産業省が公募した「2010年度希少金属利用産業等高度化推進費補助金」に応募し、対象事業に選出された。ネオジム磁石を銅やアルミ、ミックスメタルの原料と並ぶ、非鉄部門の「最重要戦略アイテム」とし、扱い量拡大を目指す。また「素材化」をキーワードに掲げており、市場ニーズに対応すべく扱い品目を拡充し、一層の差別化を図る狙いだ。
総和工場はグループ内で家電リサイクル工場と位置付けられ、コンプレッサーを適正処理している。コンプレッサー内のネオジム磁石は磁力が強く、抽出が難しいとされてきた。ネオジム磁石抽出装置が稼働したことで、今後はほかの家電リサイクル工場からネオジム磁石の抽出処理を依頼されることも期待する。
ネオジムを含むレアアースは中国への輸入依存度が高く、尖閣諸島問題の際に中国が対日輸出を禁止したことは記憶に新しい。「資源の安定供給という観点から、国内でのリサイクルが今後、一層重要になることは確実。当社の技術が、ネオジム磁石のリサイクルシステム構築の一助になればと考えている」(志賀八郎常務取締役)。