経済産業省は8日、2011年度の「レアアース・レアメタル使用量削減・利用部品代替支援事業」の1次公募の68件中49件を採択し、これらの補助金申請額は約50億円になったと発表した。3次補正予算85億円の内数で、同省は残り35億円を活用するため、5月をめどに2次公募を行う予定。
今回、同省はレアアースの中で特に資源の偏在性が高く、しかも入手困難な重希土類のうち、ジスプロシウムとネオジムの2鉱種に焦点を絞った。ジスプロシウムについては、国内約20社の自動車用小型モーターメーカーと対応・協力しながら、磁石メーカーをはじめ駆動用、EPS補機、コンプレッサー、産業機械用、HDD用、自動車、エアコンなど各モーターメーカーによる省・脱磁石の採用に伴う製品開発案件を採択の対象とした。同省の星野岳穂・非鉄金属課長は「採択事業が円滑に進めば、約2年後にはジスプロシウムの使用削減量は、国内全体の2―3割に相当する年間約200トンの効果をあげられる」と試算した。
これに関連して同省は、中国による対日レアアース輸出制限問題に触れ、半年前までは重希土類を原料とする磁石メーカー段階までしか供給に対する危機感を持っていなかったが、最近になって磁石を実装するユーザーサイドである各種モーターメーカーまで、同様な意識を共有するようになったと説明した。
一方、同省は使用済み家電製品などに内蔵され、今後とも排出量が見込まれるジスプロシウムを含有するネオジム磁石の市中リサイクル実証に向けた案件を採択した。同案件は、三菱マテリアルが全体のマネジメントを担い、これまで他のスクラップとともに、廃棄処理あるいは海外に流出していた使用済み磁石(市中リサイクル品)を、同社で確立済みの技術によって回収・処理した後、磁石合金メーカーの三徳に回送する。三徳は市中リサイクル品から再生磁石合金を製造し、磁石メーカー・TDKに送る。TDKは再生磁石合金からネオジム磁石を製造し、再生磁石として家電メーカーのパナソニックに供給する。こうした一連の社会的実証を、日本で初めて開始することになった。
同省は実証・評価支援を通じ、ネオジム磁石を含むエアコンの廃棄が本格化する15年度に、年間でジスプロシウム13トン、ネオジム69トンを回収できると見込んでいる。廃棄量の状況を勘案しながら、対象品目を拡大する考え。