銅の製錬工程で使用される低品位銅スクラップ(下銅)の需給タイト化が顕著になり、流通市場では価格の高騰が続いている。発生元となる建築解体物件などの減少や、銅価低迷で流通量が減少する一方、製錬メーカーの操業は堅調でスクラップ需要が旺盛なため、市中では集荷競争が激化。「相場を度外視した高値」(ある大手原料問屋)での集荷も散見されており、今後さらに需給がタイト化する懸念もある。
「いま足りていないのは製錬向けの低品位スクラップ」と、原料問屋各社が口をそろえるように、下銅の需給は春先から徐々に引き締まってきた。低品位スクラップの発生薄が続く中、今期の製錬メーカーの電気銅生産量は昨年比で軒並み増加しており、スクラップ使用量も増えていることから、集荷に苦戦するメーカーもあるようだ。
市中では、足元の下銅(銅分95%)の相場は、キロ500―510円(仲間現金、持ち込み価格)どころだが、相場からかけ離れた高値で玉を物色する動きが、先月後半より続いている。ある大手直納問屋は、「製錬メーカー向けに販売して、とても採算が合う価格ではない」といぶかしがり、市中価格の高騰に頭を悩ませている。
これには、集荷に不足した一部の製錬メーカーが、商社などを通して高値で手当てしている影響があるようだ。「7月以前から、キロ10―15円のプレミアムを付けて集荷する動きがあった」(関東の大手直納問屋)とされ、7月初旬には一時的にメーカーがさらにプレミアムを上乗せする向きがあったとされる。また、月末には大口の納入枠を持つ原料問屋などが、納入数量を守るため独自に買値を上乗せして集荷する向きがあり、市中価格をさらにつり上げる要因となっている。
しかし、別の製錬メーカー向けに大口の枠を持つ大手直納問屋は、「特にプレミアムは付いておらず、市中価格高騰の影響で口銭は減少する一方。枠を守るのに精いっぱいだ」と話す。原料問屋各社は、通常は選別して伸銅向けの並銅として販売するスクラップも、そのまま製錬向けに送って対応している。ただ、「それでも集荷量が足りず、数百キロ―1トンの積み重ねで集めるしかない」(同)と、今後の集荷への懸念も強い。
製錬メーカーは炉の冷却材として銅スクラップを使用する。下銅は鉄などの金属が混入しているため、伸銅メーカーは原料に使用できないが、製錬メーカーは鉄や硫黄などの不純物を取り除く転炉工程に投入する。また、近年は輸入する銅鉱石の品位が低下する傾向にあり、製錬メーカーは銅スクラップ使用量の増加で銅分を補っている。