銅建値がトン当たり100万円台で堅調に推移する中、銅スクラップの市中相場は品種によってばらつきが見られる。需給のしっかりしている銅系品種は、史上最高値に迫る水準に上昇。これに対し、黄銅棒メーカーの生産不振から需要の落ち込む黄銅棒原料は伸び悩んでいる。いずれも足元の発生量は少ないと指摘する原料扱い筋が多く、市中の商いに活気はない。
銅系品種の市中相場は、指標となる銅建値に連動して高騰している。代表品種である1号銅線の東京地区における市中相場はキロ当たり920円前後と、5月初旬に記録した史上最高値935円に次ぐ水準。実際には930円を超える取引もあり、原料問屋は高値警戒感を抱きながらも買値を切り上げて手当てしている。「足元の需要は強くない」(都内の直納問屋)ものの、発生量の減少から需給が引き締まっているためだ。
一方、亜鉛を含む黄銅系品種は伸び悩んでいる。黄銅削り粉の市中相場は685円前後と、5月初旬につけた最高値740円より50円程度安い。亜鉛建値は2カ月前と比べて7万円弱安いが、これを加味しても足元の相場は当時より割安だ。
市中相場は、足元の建値を用いたサラ合わせ価格(銅60%、亜鉛40%)の84・5%。5月の最高値時の87・8%より3ポイント程度低く、指標の上昇に相場が追いついていない状況を示している。
黄銅削り粉などの黄銅棒原料は黄銅棒生産量の減少から需要が低迷。しかし、スクラップの発生量はそれほど変わらないことから、市中で黄銅棒原料が余剰気味になっている。多くの原料問屋が必要分を超える黄銅棒原料の手当てを見送るか買値を抑えて対応しているため、市中相場に「指標」が反映されにくくなっている。
黄銅棒メーカーの生産量減少によって今後はスクラップ発生量も低減するとの推測はあるが、これから夏場の不需要期を迎える市中ではしばらく低調な商いが続きそうだ。