銅スクラップの発生不足が一段と深刻化している。伸銅メーカーの生産復調で国内の銅スクラップ需要は総じて底堅いが、市中発生量は年初からの低迷に拍車がかかり、「損を覚悟で高値提示しても集まらないから手の打ちようがない」(都内の直納問屋)とあきらめムードが漂う。相場水準が復調するまで発生難の状況が続きそうだ。
銅スクラップの発生は、景気悪化による工場発生や解体件数の減少で昨年から低調だが、年明け以降は先高期待で在庫を抱え込む売り手が増えたことなどで一段と少なくなった。今月に入ると一転して銅相場が急落。今度は高値で売り損ねた取り扱い筋に「塩漬け」の動きが広がり、市中の取引は定期ものに限られているのが現状。
国内の伸銅品生産は昨年夏までに底を打った後は年末にかけて回復基調が続き、年明け後も底堅い。このため国内の銅スクラップの需要はしっかりしており、需給ギャップが拡大している。
すでに黄銅棒原料の黄銅削り粉は「今月から新規手当てで納入枠を埋められなくなり、手持ち在庫を切り崩している」(同)との声が多く聞かれるなど、タイト化が表面化している。黄銅棒メーカーにも目先の集荷難への懸念が強まり、「各メーカーとも定期購入に加え、スポットでも積極的に買うようになっている」(同)。
1号銅線、上銅、セパなどのウワ物品種については、大手伸銅メーカーが3月の決算期に向けて適正在庫を維持する動きもあるため、スポットでの購入はあまり見られず、タイト感が黄銅削り粉ほどは強くない。ただ、「売り物が減っているのは同じで、必要数量をギリギリ集められる程度」(大手直納問屋)。
伸銅品生産量が回復した以上、伸銅品の加工工場や解体現場などから発生する銅スクラップもいずれは増加することが予想される。「納入義務を持たない地方業者などには、大量に在庫を積んでいるところもあるのではないか」(同)との指摘もある。
だが、こうした市中の潜在在庫がどのタイミングで市中に出てくるのかを見通すことは難しい。いずれにしても「相場急落で売り手の心理が冷え込んでおり、底打ちして再び銅建値75万円水準あたりまで戻らなければ、まとまった発生は期待できない」(同)との見方が有力。2―3月はタイト化がさらに進行することが予想される。