ニッケル系スクラップ
需要減退・価格続落懸念強まる
クロム系へステンレス素材移行
日刊産業新聞 07/09/06
ニッケル系スクラップの需要減退と価格続落に対する懸念が強まっている。ステンレス素材のクロム系へのシフト、さらには代替品のニッケル銑鉄の使用拡大により、ニッケル系ステンレスは減産され、将来の需要回帰も難しくなりつつある。国内では大手ミルが6月に手当てした高値玉をまだ消化できず、ニッケル系スクラップの荷動きは閑散を極めており、相場続落に対する不安を心理的に煽っているようだ。
ニッケルのLME相場は5月をピークに、3カ月間で半値の2万ドル台後半まで暴落。先週末に3万ドルを一時回復する局面もあったが、実需の弱さが蒸し返され、5日入電では前日比1355ドル安の2万8050ドル(セツルメント)と大幅に値を下げている。
4月に欧州の大手ミルが先行して減産を開始。7月からは中国大手ミルが20―30%の大幅減産に踏み切り、相場の続落に追い打ちをかけた。引き金となったのはステンレスそのものの減産ではなく、ニッケル系からクロム系やマンガン系への生産シフトが急速に進んだことが挙げられる。
クロム系ステンレス製品の価格はニッケル系と比べても半分以下で、建材など汎用的な用途では代替が加速し、国内外の大手ミルは一部の冷延ラインをクロム系用に急いで切り替えている。そのため、ステンレスの世界需要は拡大しているものの、ニッケル系ステンレスの生産は制限されている。
また、主に中国でニッケル系スクラップの代用品の「ニッケル銑鉄」の使用拡大も、ニッケル系ステンレスの後退に影響を与えている。ニッケル銑鉄から作られたステンレス代用品は、中国国内でニッケル系ステンレスを駆逐する勢いで広がっており、これが同国の大減産にもつながった。これらニッケル系ステンレスの需要が元に戻るのは難しいとされる。
先月下旬以降、LME相場は2万ドル台後半で下げ止まり、一進一退を繰り返しているが、国内市中筋では下値不安が強く、続落予想が大半を占めている。中には「底値1万5000ドルまで覚悟している」(特金スクラップ問屋)との声もある。
国内の大手ミルは6月にスクラップを大量に手当てしたが、仕入価格に前月平均を用いるため、結果的に最高値時の購入となってしまった。この高値玉をメーカーが消化できないため、原料問屋のヤードにはスクラップが山積み状態となっている。扱い筋は「国内はもちろん、海外の買い気も極めて薄い」(同)と話しており、ニッケル系スクラップは行き場を失いつつある。
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