電線、伸銅メーカーは原料問屋から購入する銅スクラップの数量を1―3月期は大幅に減らす。景気後退の影響で電線、伸銅品の需要が急速に落ち込んでいるため。足元は製錬メーカーから電気銅を安く仕入れられることから値決めの条件も引き下げる。これに伴い原料問屋も市中から集荷する際の購入条件引き下げを避けられず、年明け以降は市中相場が一段と冷え込みそうだ。
電線、伸銅メーカーは世界的な経済危機による需要減退から秋以降の減産を余儀なくされている。製錬メーカーから長期契約で購入する電気銅は契約に基づいて購入する必要があるため、もう一方の原料であるスクラップの手当てを大幅に削減して調整する。
1―3月期は、ほぼすべてのメーカーが原料問屋と結ぶ長期契約の銅スクラップ購入量を3―5割削減。銅箔、リン青銅メーカーなどには8割超カットする動きもある。
メーカー各社は同時に銅スクラップ購入時の値決め条件を引き下げる。関東の大手伸銅は電気銅の代替原料になる1号銅線を従来は銅建値の91―92%の価格で手当てしていたが、年明け以降90%以下に抑える見込みだ。
1号銅線などウワ物の値決めは、海外相場を単純に円換算した「写真価格」をもとに行う場合も多い。ある大手伸銅は、写真価格に上乗せするプレミアムを半減すると通達。また、写真価格の計算に使用する為替部分を従来のTTSからTTM(TTSとTTBの中間値)に変更する動きも広がっている。
TTSは円をドルに交換する際の手数料込み相場で、為替レートが1ドル=100円であれば101円前後。一方、ドルを円に交換するTTBは手数料分安い99円前後となるためTTMは約100円となる。プレミアム引き下げやTTMへの変更により、メーカーは写真価格ベースの取引でも銅スクラップの購入条件を引き下げる。
この背景には足元は製錬メーカーから従来より割安で電気銅を調達していることがある。12月に入ってからは、「建値の90%台前半の1号銅線とほとんど変わらない値段で電気銅が手当てできるようだ」(都内の直納筋)という話が聞かれる。
原料問屋は流通量が大幅に減ることで利益が圧迫され、口銭幅まで縮小すれば致命傷になる。「販売条件の悪化に伴い市中からの購入条件を抑え、利益を確保しなければならない」(大手直納筋)として、仕入れ先に年明け以降の取引条件引き下げを説明している。
原料問屋の1号銅線購入価格は9月ごろまで建値の90%台前半で推移し、12月には85―86%あたりまで下がった。足元はさらに80%台前半まで引き下げる動きも見られ始めた。
高付加価値で1号銅線より高値取引される電線ナゲットについては、主要な需要家である銅箔メーカーが「生産不振から1―3月期は1号銅線に近い水準へ条件を下げる」(同)とみられ、ナゲット原料の被覆電線相場はとくに悪化する見通し。伸銅向けの並銅や新切れ黄銅セパなどもメーカーの値決め条件引き下げが見込まれ、多くの品種で市中の取引条件の悪化を避けられない様相だ。