銅スクラップの相場水準が上昇傾向にある。需給緩和で市中の取引価格は先月から割安傾向が進んだが、年初以降の発生低迷により、先行きの集荷不安が浮上。買い手市場が解消しつつある。需要家の伸銅メーカーなどは、今月から購入価格条件を引き下げたところが多いため、原料問屋は販売価格安と市中相場上昇の板挟みで頭を悩ませる。
銅スクラップの代表品種である1号銅線の東京地区市中相場(仲間現金)は、25日時点でキロ720円前後。まとまった持ち込みについては「730円以上は出さなければ買えない」(都内の原料問屋)のが現状だ。
指標となる銅建値が足元と同じトン82万円だった11日には、720円以下に抑える問屋がほとんどだったため、市中の相場水準が一段高となっている。
銅箔、伸銅、製錬メーカーなど銅スクラップの需要家は、製品需要下振れや在庫増を理由に、先月から購入量を減らしている。先月はスクラップ発生元の在庫整理などで、ある程度まとまった発生があったため、市中のタイト感が解消。急速な需給緩和で売り手市場に転じ、市中相場の割安傾向が進んだ。
しかし、年明け以降は先月の発生増の反動もあり、発生が極端に低迷。ほとんどの問屋が中旬までに今月分の商いを終えたが、「来月以降は足りなくなる」(都内の直納問屋)との警戒感が強まった。問屋各社に買い気が戻ってきたことで、相場水準が徐々に切り上がっている。
足元の市中相場の水準は、昨秋以前の割高感からすれば適正な範囲内で、原料問屋に「やむを得ない」(同)との雰囲気が広がる。ただ、集荷競争がさらに本格化すれば、極端な高値取引が復活する可能性がある。
多くの需要家が、1月から購入価格条件を引き下げた。東日本の複数の大手黄銅棒メーカーは、黄銅削り粉の購入価格条件をトン1000―4000円引き下げ。ある大手製錬メーカーは、銅スクラップ購入価格に上乗せする割増金(プレミアム)を3000―4000円引き下げた。
決算期に向けた需要家の在庫調整なども考慮すると、価格条件が改善するのは「早くても春以降だろう」(大手直納問屋)との見通しが聞かれる。一方で市中の集荷状況はタイト化傾向が進む可能性があり、利幅縮小を懸念する声が聞かれる。