銅建値が3カ月半ぶりの高値となるトン91万円に改定されたことを受け、銅スクラップの代表品種である1号銅線の市中相場もキロ800円台を回復した。ただ、市中の品薄に変化はなくノミナル高の様相が続いている。荷動きの伴わない相場好調に歓迎ムードはない。多くの加工メーカーや原料問屋が決算を迎える来月の発生増加に期待を寄せる声が聞かれるものの、厳しい見通しも目立つ。
銅建値は先月22日に78万円の直近安値をつけて以降、堅調な海外相場を反映した5回の改定で都合13万円(16・6%)上昇した。1号銅線の東京地区における市中相場は同期間で約100円上伸し、足元は810円前後で取引されている。
しかし、市中で昨年末から続く品薄状態は、相場が上昇しても反応がない。とくに「年明け以降は輸出向けの雑品や雑線なども含めて、発生が一段と少なくなっている」(大手原料扱い筋)との指摘がある。
需要家である伸銅メーカーへの納入量は黄銅棒原料を除けば昨年後半からほぼ横ばいのため、納入義務を負う直納筋の多くは在庫を切り崩して伸銅メーカーへの契約分の納入を履行せざるを得ない。このため原料扱い筋は手当て優先の姿勢を強め、まとまった売り込みに対しては相対で相場より高めの買値を提示しなければならない場面も増えている。
例年、多くの企業が決算期になる3月は在庫整理や現金化のため、スクラップの売り込みが増加する。在庫に余裕がなくなる扱い筋が増えるなか、市中では「来月は若干でも発生が増えるかもしれない」(都内の直納筋)と期待する向きがある。
一方で、「伸銅メーカーの生産減少の影響で操業の低迷する小規模の加工工場からの発生は期待できない。さらに余剰な在庫を抱える問屋もないため、今年は年度末でも故銅の発生増加は見込めないのではないか」(同)と厳しい見通しも多く聞かれる。
伸銅品需要が回復し、製品、スクラップの一連の流通が増加しない限り、市中のノミナル高は今後も長引きそうだ。