6月の韓国向け廃バッテリー輸出が、1年ぶりの高水準となり、鉛の二次精錬筋で、原料調達に対する不安が再び強まってきた。昨今の鉛業界は、この輸出情勢を憂いながらも、流出に歯止めをかける有効策を見いだせなかったのが実情だ。韓国の輸入の背景には、中国の旺盛な需要がある。そこで韓国側の輸入事情を探ってみたところ、その原因が日韓以外に存在する可能性や、世界中に広がる韓国の集荷ネットワークが明らかになってきた。国内の厳しい環境を打開するヒントが、そこにあるかもしれない。
◇最大輸入先は米国
日本貿易振興機構(JETRO)が公開している韓国関税庁の輸入統計によると、2009年の廃バッテリー輸入数量は14万7769トン。輸入先は米国が5万7249トン、日本が5万988トンを占めた。日本側の財務省輸出統計と比べるとやや多く(4万8771トン)、誤差は4%程度。
両国の輸出数量の推移からは、鉛相場とその2次的な連動を看取できる。韓国側の購入価格の指標とされるロンドン金属取引所(LME)相場の前月平均と、米国の輸出数量はほぼ連動しているのである。LMEが1000ドル台前半で推移していた09年前半の米国輸出は、月間2000トン台と低調だった。
代わって増えたのが、日本からの輸出であった。日本が過去最高の5000トン台に達した昨年4―5月は、ちょうどこの米国輸出の停滞期にあたる。日米は相互補完関係というより、日本が米国減少分を補う2次的な立場のようである。
◇日本への依存高まる
ゼネラルモーターズ(GM)破たんなどで、09年の米国の鉛バッテリー需要は大きく落ち込んだ。LMEの鉛地金の米国港湾在庫が増加したことにも、それは顕著に表れた。09年後半の鉛相場回復に伴う廃バッテリーの輸出増は、米国国内での荷余りによる余剰玉放出という一面があったのかもしれない。
その後、今年に入り米国輸出は月を追って減少している。LME相場は4月まで2200ドル台を維持していたが、内需が回復したためか、明らかに米国の輸出余力は後退している。市中筋では「環境問題から規制がかかったのでは」(二次精錬メーカー)などとうわさされたが、6月時点で依然3000トンが輸出されており、完全にストップしたわけではないようだ。
こうして米国の代替地として依存度が高まった日本から6月、大量の4458トン(韓国輸入統計では5156トン)が輸出された。
◇集荷は世界に拡大
韓国の輸入先は世界中に広がっている。日米の占める輸入割合は08年78%、09年75%に対し、今年1―6月は62%に低下した。日米に次ぐのが、意外にもドミニカ共和国、クウェート、スーダンといった発展途上国である。
08年に実績がなく、09年中に輸出が始まった国には、アフリカのスーダン、モーリシャス、中南米のパナマ、ガイアナ、中東のバーレーンなどがある。今も数量は増加傾向にある。
それらの発展途上国には、単独で輸出量相当の廃バッテリー発生があるとは考えにくい。韓国の積極的な輸入姿勢が、世界各地の廃バッテリー流通構造の変化をもたらし、それらの国が中継地となって集荷・輸出されていると想定される。
韓国の廃バッテリー集荷は、もはや世界規模である。しかし、日本が有力輸出国と目されていることに変わりはない。