世界最大手のアルミ二次合金メーカー、シグマグループ(本社=台湾高雄市)が、1978年の創業以来初めてアルミ原料不足に直面している。8日、産業新聞の電話取材に応じた同グループのトニー・フアン・会長兼CEOは「国内需要家からの引き合いが増加しているものの、発生薄で十分な原料を確保できず注文に応じ切れていない」と語った。同社はロシアからアルミ再生塊べースメタル(AK5M2)の大量調達に踏み出すなどして、対応を急いでいる。
スクラップ不足に直面する上海シグマの原料ヤード |
中国の二次合金メーカーが原料の大半を手配する米国では、長引く不況の影響でアルミスクラップの発生が一段と減退している。こうした状況下、中国需要がさらに強まったことで、昨年から恒常的にひっ迫していた需給のタイト化が著しく進展、米アルミ原料市況を大きく押し上げる。フアン会長は「昨年末と比較し、全体的な原料価格がトン当たり100―150ドル、9%ほど上昇している」と指摘する。
2009年に米国を抜き世界最大の自動車生産・販売市場となった中国は、5月に開催される上海万博を控え、勢いを一段と増している。シグマグループの各製造拠点に対してダイカストメーカーなど顧客からの引き合いが増加している。
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同社は、米国だけでなく、欧州や中東など他の地域からの原料集荷を手厚くし、早急な購入量の拡大を図っている。「1月は急きょ、地元のスクラップ業者からも原料を手当てした」。ここ数年使用してこなかった高品質原料、ロシア産AK5M2も大量に成約。フアン会長は「3月には十分な原料を確保でき、受注増に対応できる」と予測する。
1月の各拠点の生産見通しは、上海シグマ(上海市宝山区)が2万3000トン。このうち1万4000トンが輸出で、日本向けが7000トンを占める。
重慶シグマ(重慶市)は3500トン。昨年12月に生産ラインを増設し稼働能力が月7000トンにアップしたものの、「現在、新設炉を予熱するなど準備を進めている。2月の春節休暇明け、遅くとも3月にはフル稼働に転じる」見通しだ。
カン州シグマ(福建省カン州)は6000トン、高雄シグマ(台湾高雄市)は4500トンをそれぞれ見込む。両拠点とも引き合いが増えており、原料が確保でき次第、増産に踏み出す。