9月積み銅建値は11日、海外銅相場の急伸を受け、5月17日以来の高値となるトン67万円に上伸した。市中発生薄に悩む銅スクラップ市況にとっては明るい兆しとなるが、現時点では市中の荷動きに大幅な改善は見られていない。ここ数カ月の銅価低迷で、在庫に評価損を抱える売り手が多いためだ。銅建値70万円が市中発生増の目安とされ、今後の海外相場動向に注目が集まっている。
年初に64万円でスタートした銅建値は4月まで上げ基調で推移したが、4月4日の75万円を境に下降トレンドに転換。建値の平均価格は4月の71万5000円、5月の67万7600円と下げ、6月以降は63万―64万円台で推移した。
関東地区では、「建値が70万円を回復すれば、売り物が増えるだろう」(市中売り手)との期待が強い。3―4月は決算期末と相場上昇が重なり、市中発生増によって仲間問屋から直納問屋までスクラップの在庫が増加した。ただその後は、銅価下落により評価損を受けたため、玉を売り渋る向きが広がっているためだ。4―5月の建値の平均価格に近い70万円は、評価損解消の分岐点となっている。取扱量の減少によって資金繰りに苦慮する業者も多いため、建値が70万円に続伸すれば、市中に売り物が一気に増える可能性もある。
銅系スクラップの中心品種である1号銅線の市中価格は、12日現在、キロ585―595円どころ。ただ、売り手は現行水準では売り渋っており、「小口でも600円以下の手当ては難しい」(大手直納問屋)とされる。さらに、伸銅メーカーの10―12月期の原料需要は低迷が続くとみられ、多くの直納問屋が販売先確保への懸念から高買いを躊躇しているため、現状では売り・買いともに見合った状況となっている。
一方で、製錬向けの低品位スクラップ(下銅、山行き2号)は市中のタイト感が強く、価格が高騰している。景気低迷で解体、建設業の動きが鈍く、現場から発生する「込み銅」が慢性的に少なくなっていることが背景にある。その上、今期は軒並み増産となる製錬メーカー各社の引き合いは、堅調に推移している。製錬向けは銅価の上げ下げにかかわらず今後もタイト感が続くだろう。