鉛リサイクル原料の廃バッテリーが、韓国向け輸出増加のため需給がひっ迫し、価格が高止まりしている。一部の一次製錬・二次精錬メーカーは買い取り価格(液入り、置き場現金)をキロ当たり50円台前半に設定して輸出価格に対抗しているが、韓国輸入筋は2―3円上回る価格を提示。市中の出し惜しみも加わって集荷難・価格高に拍車がかかっている。
廃バッテリーの市中価格の指標となる鉛のロンドン金属取引所(LME)相場は、先月中旬1800ドル近くまで上昇したが、現在は1600ドル前後まで値下がり。輸出向けに再生鉛を生産する二次精錬メーカーによれば、「今の相場と為替なら廃バッテリー購入価格はキロ40円台半ばが採算ライン」とのことだが、50円台半ばの輸出価格につり上げられているのが現状。
近年の暖冬のため、廃バッテリーは慢性的に発生が少ない上に、輸出価格の上昇とバッテリー国内生産の回復を眺めた集荷業者が、先高を見込んで手持ち玉を売り惜しむ動きもある。
一部の精錬メーカーは輸出価格に対抗して高値を提示しているが、「それでも原料が集まらない」との声も聞かれるほど競争は激化。ある大手製錬メーカーは「手が出ない価格帯」と諦めムードだ。国内の大手バッテリーメーカーは、補修用製品の市中在庫が一巡したこともあり、1―3月の大規模減産から一転、夏季需要を見込んで6月から減産を解消している。増産要請を受けている製錬・精錬メーカーは、中国に輸出していた余剰玉を国内向けに回して対応しているが、原料事情から増産は難しいもよう。
国内バッテリーメーカーの再生鉛購入価格は、相場安を反映して下落している。国内販売をメーンにする二次精錬メーカーの多くが、「足元の販売価格から考えると、廃バッテリーの平均単価を40円以下に抑えなければ採算維持が厳しい」と話す。
このため、国内向け精錬各社は原料価格を販売価格に転嫁できず、集荷競争力を失っている。今後、バッテリーメーカーに対して再生地金の価格条件の引き上げを要求する動きが出てくる可能性がある。梅雨明け後の夏季需要次第で廃バッテリーの需給や価格は変動するが、そのほかに相場、為替、韓国側の輸入姿勢など不確定要因が多く、先行きが見通しにくい情勢だ。
廃バッテリーの韓国向け輸出が月を追って増加し、積み出し港も全国に広がっている。4月は5506トン、5月は5655トンと、前年平均と比べて倍増。足元も高い水準の輸出が続いており、国内需給を圧迫している。
財務省の輸出統計によると、「一次電池または蓄電池のくず並びに使用済みの一次電池および蓄電池」の1―5月輸出総量は2万2560トン。うち97%の2万1876トンが韓国向けで、鉛バッテリーがほぼ全量を占める。
港別で輸出比率を見ると横浜港が突出し(1―5月37・2%)、すでに昨年を上回っている。主要港のうち、大阪港の比率はほぼ横ばいだが、名古屋、神戸、博多の各港の比率は下がっている。
代わりに、地方港では増加と新規積み出し開始が目立っている。今年初めて廃バッテリー輸出が確認されたのは八戸、仙台塩釜、千葉、熊本、沖縄の5港。東北地方と九州地方は積み出し港の入れ替わりが激しく、九州地方では博多港の減少分が南へ拡散する傾向が見て取れる。
5月の輸出単価は、前月よりキロ当たり4円アップして46円。6月はLME相場の月間平均が200ドル以上も上伸したため、50円を超える水準に値上がりしたとみられる。