中国は6月から、輸入する非鉄、鉄、雑品などの金属スクラップについて、複数品目の積み合わせ(混載)を基本的に禁止する。各税関は独自にこれまでもスクラップ輸入時の通関検査や許可基準を厳格化してきたが、今回の規制強化は税関当局の公告に基づくもので強制力が強い。スクラップ輸出筋には6月前半の中国向け輸出を一部見送る動きもあり、国内の取引にも影響を与えそうだ。
中国の海関税署は3月末、2010年第21号公告を発表した。内容は、輸入スクラップの混載をコンテナ、バラ積み船ともに原則禁止とするものだ。
日本は中国向けに、鉄をはじめ雑品、雑電線、モーター、銅、ステンレス、アルミなど多くの金属スクラップを輸出している。高品位の非鉄スクラップや廃電線はコンテナ積みで、鉄や雑品はバラ積み船で輸出するのが一般的だ。
中国は急速な経済成長を背景とした資源需要からスクラップ輸入が増加してきたが、脱税目的の悪質な不正貿易も横行。とくにコンテナ積みは、入り口付近に低品位品を積んで高価値品を奥に隠し、税金を偽装申告するなどの不正が相次いだ。
中国各地の海関はこうした脱税行為を取り締まるため、高品位スクラップの混載を基本的に禁止したり、混載する場合はフレコンなどで品種ごとに分けることを義務付けたりしてきた。しかし、「当局が正式文書で混載禁止に言及するのは初めてだろう」(大手輸出筋)との指摘があり、6月からは一段と混載禁止が徹底される見通しだ。
コンテナの場合は1本単位の検査が比較的容易なため、「バラ積み船より規制が厳格に守られることになる」(同)との見方がある。コンテナ積みスクラップの主要な貿易港である天津、広州向けをメーンとする輸出業者は大きな影響を受けそうだ。
バラ積み船は事前認証を受ければ混載が認められるようだが、その場合にはスクラップ解体業者が集まる保税地域「園区」で品種ごとに選別した上で課税申告しなければならない。複数の輸出筋が、「バラ積みの主要な貿易港である台州や寧波ですべて選別するのは不可能で、実効性がどの程度あるのか今の時点では分からない」と疑問を呈する。
ただ、海関税署が公告を出したことでバラ積み船でも対応が強化されることは必至。不適格と判断されればシップバックなどのペナルティーを受けることもあるため、「6月前半は出荷を一時止めて海関の対応を見守り、しっかりと準備した上で輸出を再開する」(大手輸出筋)との声も聞かれる。
上海万博開幕による操業規制や非鉄金属相場下落の影響で足元は中国筋の引き合いが極端に少ないこともあり、国内の輸出業者には入荷量を大幅に減らし、単価も抑える動きが広がりつつある。新基準での取引が定着するまでには時間がかかりそうで、荷動き、単価を含めた輸出向けスクラップ市場の混乱は当分続くとみられる。