鉄スクラップを取り巻く環境が2008年に入り、新たなステージを迎えた。これまで、おもに地場の電気炉で役目を終えていたものが、今や高炉メーカーや海外からの需要も増加し、『電炉用製鋼原料』から『貴重な金属資源』へと化した。鉄鋼業界のなかで、鉄スクラップの存在価値が従来以上に高まっている。
国内の鉄スクラップ価格(H2)は7月、トン7万円に到達し過去最高値を記録。市況低迷期だった01年はトン6000円台、当時と比較すると10倍以上の値段になる。
ここまで上昇した理由として、世界的な粗鋼生産の増加に加え、環境面からみても重要性が増したことが挙げられる。それと同時に、日本の鉄スクラップは東アジアを含めた国際商品へ変貌した。
粗鋼生産の増加に伴い、国内の鉄スクラップ需給はタイト化が進んでいる。10年前に需給ギャップが500万トンあったのに対し、一昨年、昨年と100万トンを割り込んだ。
07年の国内鉄スクラップ消費量は前年比4・2%増の5255万7000トンとなり6年連続で増加。旺盛な粗鋼生産を背景に鉄スクラップの重要性が増したことがわかる。消費量の内訳は、電炉鋼では3・2%増の3209万1000トン、転炉鋼では11%増の1239万1000トン。
国内での消費量が増加した一方で、鉄スクラップの輸出量は前年比15%減の644万9000トン。輸出量は過去最高値の06年から約120万トン減少した。これは、日本国内の発生量が大幅に減少したわけではない。内需の増加が最大の要因である。
国内需要の増加。なかでも、高炉メーカーの存在が目立つ。国内では、普通鋼電炉メーカーに加え、CO2排出量削減など環境対策の一環として、高炉(とくに、新日本製鉄とJFEスチール)が鉄スクラップの調達量を拡大している。
08年も国内需要は増加傾向にあり、同時に輸出減への流れは変わらない見通し。1―6月の鉄スクラップ消費量は、前年同期比7・5%増の2819万1000トン。そのなかで、転炉鋼での鉄スクラップ消費量は約22%増加した。一方、輸出量は17%減の318万9000トン。「国内、とくに高炉からの鉄スクラップ需要が減少しない限り、年間の輸出量が増加する可能性は低いだろう」(商社)。
01年以降、国内では鉄スクラップ供給量、消費量ともに増加傾向をたどっている。そのなかで、輸出量が過去最高となった06年は、海外需要が市況をけん引しH2の価格はトン3万円に到達した。
その後、07年から08年7月まで一時的な乱高下はあったものの、鉄スクラップ価格は総じて上昇傾向をたどった。その理由の一つに、鉄スクラップの購入量を増やしている高炉メーカーの存在がある。
07年以降、日本国内では、高炉メーカーが鉄スクラップ市況を形成する要因に加わった。