トップ > 鉄・非鉄スクラップ特集 > 鉄スクラップ

創刊70周年特別企画
電炉・鉄スクラップ業界の課題と展望/鉄鋼・座談会 <上>

高度成長期経て規模拡大

日刊産業新聞 06/04/11

座談会<上>  座談会<中>  座談会<下>
出席者:
普通鋼電炉工業会猪熊研二会長(合同製鉄社長)
高島成光副会長(共英製鋼会長兼CEO)
日本鉄リサイクル工業会鈴木孝雄会長(鈴徳社長)
中辻恒文副会長(中辻産業社長)
司会:
産業新聞社青木廉典編集局長
世瀬義久企画編集局長
  電炉業界と鉄スクラップ業界は、需要家と供給者として密接にかかわっている。弊社が本年創立70周年を迎えたことを機に、電炉、鉄スクラップ業界のトップ4氏を招き、座談会を開いた。入社以来の思い、業界の置かれた現状やこれからの課題、人材育成などを率直に語り合ってもらった。(本文は敬称略)

  司会=電炉、鉄スクラップ業界に初めて属した当時の感想を聞かせて下さい。また、特に印象に残った出来事などがあれば。

  猪熊「高炉メーカーの新日本製鉄に約40年在籍し、その後、普通鋼電炉メーカーの合同製鉄に社長として就任した。高炉に属していた時期から、電炉業界は企業数が多く原料の鉄スクラップは安定供給に程遠く、かつ、価格が乱高下するため収益を上げることが難しく、経営が大変だと思っていた。一方で電炉業は東京製鉄がH形鋼に参入して以来競争相手でもあり、新日鉄の取締役時代にはH形鋼を担当し、東京製鉄といわゆる『第三次H形鋼戦争』を始めた。電炉は高炉と比べ設備投資が小さく、人員も少ないため製造コストが低いことを最大の武器としてシェアを拡大してきたが、転機は1990年代前半に為替が100円を超える円高になったことにより、原料を輸入に依存している高炉の製造コストが下がり、初めて電炉メーカーと製造コストで競争できる見通しが立った。特に限界コストでは、高炉優位が明らかとなった」

  高島「61年に高炉メーカーの住友金属工業に入社した。61年は日本の青春の始まりの年だった、と思う。68年には高島家がオーナーとなっている共英製鋼に入った。高炉時代は、電炉業は鉄鋼業界の大切なメンバーという認識だった。70年代までは青春があったが、71年のニクソンショックで為替が1ドル308円になり、2年後の石油ショック、さらに第2次石油ショック、85年のプラザ合意で利益の出ない業界になった。スクラップは『マルサスの世界』で需要の増加に対して不足するのに、製品価格は『アダム・スミスの世界』で完全な自由競争。みんなが一生懸命働いているのに、収入はいつも不安定かつ安かった」

  司会=鈴木会長、中辻副会長ともオーナー家の企業に入られた。

鈴木「68年に鉄スクラップ業者の鈴徳に入社し、そこで初めて鉄スクラップに出合った。入社当初は鉄スクラップの商売はラフだなと思った。90年までの鉄鋼業界は、日本経済の成長と同様に急激に成長した。今の中国と同じで常に原料が足りず、製品は造り過ぎの状態だった。鉄スクラップ業界は90年のバブル崩壊で右肩上がりの成長モデルが終わり、経営の質が問われるようになった。その間、円の為替レートは切り上がり、それに反比例して鉄スクラップ価格は下落した。そのままいくと日本でも企業の淘汰は進んでいたが、中国経済が立ち上がったことで、昨年までの数年間は価格が上昇して利益が出せた。ただ、みんな儲かったことで構造改革は休止し、業界の集約、再編は先延ばしとなった」

  中辻「75年に鉄スクラップ業者の中辻産業に入社した。当時、鉄スクラップ業界は電炉業界を含め、通商産業省(現・経済産業省)の主導で過剰設備の廃棄を進めていた。鉄スクラップ業界は集荷力が重要というイメージだった。その後、鉄スクラップ業界には大きな出来事が2つある。1つは95年に日本が鉄スクラップの純輸出国になったこと。2つ目は00年を境に循環型社会形成基本法に基づき各種リサイクル法が整備されたこと。また、90年代後半に業界の自主的な取り組みとして逆有償システムを構築した。しかし、中国の粗鋼生産の伸びにより鉄スクラップ価格が上昇したことで、今まで積み重ねてきた逆有償システムが崩壊しつつあることは気掛かりだ」


座談会<上>  座談会<中>  座談会<下>


 注目の鉄スクラップ関連ニュース
山陽、加西にメガソーラー 13/03/18
鉄スクラップ1―3月見通し 輸出、前年上回る高水準 13/02/19
富士繁、八王子工場が営業開始 13/01/29
鉄スクラップ1―3月見通し 輸出、前年上回る高水準 13/02/19
富士繁、八王子工場が営業開始 13/01/29
イボキン、尼崎にヤード新設 12/12/21
共栄、水島工場の主要設備を一新 12/11/26
インド、鉄スクラップ輸入量78%増 12/11/06
ナベショー、マンション事業好調 鉄スクラップ事業と相乗効果 12/10/24
大都、大阪・南港に営業所新設 12/10/18
縮小する鉄スクラップ市場 生き残りをかけて/上 12/09/26
扶和メタル、埼玉に新ヤード開設 12/08/06
青函連絡船「羊蹄丸」解体へ 12/07/13
「鉄スクラップの日」 日本鉄リサイクル工業会 影島一吉新会長に聞く 12/06/29
新日鉄・広畑、鉄スクラップ 外部玉に依存せず 12/06/25
中国、鉄スクラップ利用拡大 鉄鋼備蓄、15年100億トンへ 12/05/11
ナベショー、中古機械取引を本格化 売買仲介サイト立上げ 12/04/20
2020年廃車発生 3割減試算 シュレッダー稼働率30%割れ 12/03/27
共栄、水島工場の設備一新 12/03/07
メッツォ・ジャパン、アジアでグループ連携 12/02/21
鉄スクラップ需要、電炉増加見込み 12/01/13
鉄スクラップ市場動向を聞く/増井重紀・扶和メタルUSA社長 11/12/28
東金属、再生手続き開始 ヤマダ電機がスポンサー契約 11/11/28
オカガミ、今期扱い3万トン計画 11/11/15
鉄スクラップ市況、東西で3万円割れ 1年ぶり 11/10/26
韓国鉄スクラップ業界、ヤード許可制に戸惑い 11/09/13
税関別鉄スクラップ輸出 1―6月 11/08/17
丸紅テツゲンの戦略/大林啓二社長に聞く 11/07/12
東京製鉄の購買戦略/鉄スクラップ市況は海外牽引 11/06/23
東北3県、鉄スクラップ89万4000トン 回収量を試算 11/05/24
エンビプロHD、長野大手を完全子会社化 11/04/21
上級新断スクラップ、鋳造向け需給ひっ迫 11/03/30
中山鋼業、低級原料で高品質製品 11/02/10
産業振興、ヤード開設拡張相次ぐ 11/01/12
伊藤忠商事、大連にリサイクル拠点 10/12/27
平林金属、玉島物流拠点が完成 鉄スクラップ在庫集約 10/11/10
大都、助松埠頭のヤード拡張 工場誘致も検討 10/10/29
本紙鉄スクラップ企業調査 下期市況は強弱両含み 10/09/16
マキウラ鋼業、金属選別ライン増強 10/08/25
廃車鉄スクラップ、09年発生7%増 204万トン 10/07/27
メタルワン建材、川崎第2ヤード開設 10/06/29
三井物産、資源投資を積極化 10/05/25
丸紅テツゲン、供給網拡充に重点 10/04/27
鉄スクラップ、中・韓・台が主導権 10/03/18
ナベショー、鉄スクラップ取扱量 6年連続200万トン超 10/02/26
岐路に立つ 鉄スクラップ業界/鉄スクラップ輸出、合理的仕組み構築カギ 10/01/14
岐路に立つ 鉄スクラップ業界/鉄スクラップ市場、国内低迷もアジア活況 10/01/14
三井物産メタルズ 堺事業所、廃車処理から撤退 09/12/15
日本鉄スクラップシンポジウム(5)パネル討論/アジアの鉄スクラップ市場はどのように変貌をとげるのか 09/11/24
日本鉄スクラップシンポジウム(4)テーマ別講演/世界の鉄スクラップ需給見通し 09/11/24
日本鉄スクラップシンポジウム(3)テーマ別講演/世界の鉄鋼需給見通し 09/11/24
日本鉄スクラップシンポジウム(2)テーマ別講演/日本経済の現状と鉄鋼産業の今後の方向性 09/11/24
日本鉄スクラップシンポジウム(1)東部製鉄社長・特別講演 09/11/24
電炉・鉄スクラップ 混迷する業界(上) 09/10/07
JFES・京浜シャフト炉再稼働 鉄スクラップ、需給タイト化も 09/9/07
鉄スクラップ、1―6月消費半減 09/8/13
日本鉄リサイクル工業会 全国インタビュー 09/7/1
高炉大手、鉄スクラップ購入再開 09/6/2
鉄スクラップ 国内消費7年ぶり減 09/5/21
鉄スクラップ輸出7倍 1―3月 大阪湾岸 09/4/15
鉄スクラップ、輸出次第で国内上伸も 09/3/25
ダイワスチール、スクラップヤード拡張 09/2/27
鉄スクラップ、炉前価格が反発局面 09/1/14
JFEスチール・京浜、鉄スクラップ利用促進 08/12/17
山本資源、ベトナム進出 初の海外進出 08/11/12
激化する資源調達戦 鉄スクラップ新時代/(1)貴重な金属資源 08/8/21
日本鉄リサイクル工業会 中辻恒文会長インタビュー 08/7/1
韓国、鉄スクラップ需要600万トン発生 08/6/10
鉄スクラップ “6万円時代”到来 08/4/14
大原商事、スクラップ事業に本格参入 08/3/31
鉄スクラップ関西共同輸出入札、過去最高値 08/2/27
三井物産金属原料と三井物産非鉄販売、合併 08/1/31
丸紅テツゲン、蒲郡にヤード開設 07/12/20
JFEスチール、京浜に導入/大型シュレッダー設備 07/11/08
ステンレススクラップ 大阪、半年ぶり上昇 07/10/02
扶和メタル、米国進出 07/09/03
栗本鉄工、飲料缶リサイクル子会社 田口金属に売却 07/08/27
新日鉄、大分に新設 国内最大規模シュレッダー 07/07/12
変貌する鉄スクラップ市場―需要拡大とグローバル化/(1) 価格決定権、海外に 07/06/13
鉄スクラップ国際市場 需給再びタイト化へ/トルコ・韓国 米産手当て再開 07/05/02
鉄スクラップ関東炉前価格 3カ月ぶり下げ/輸出配船が低迷 07/04/27
鉄スクラップ、一部で値下げ 大阪 07/04/27
国内購入3000万トン突破/06年鉄スクラップ、東北除き前年上回る 07/04/24
地域別鉄スクラップ輸出 06年、国内高で6%減/北陸・近畿・中四国は増加 07/04/16
東港金属、最新シャー稼働順調/スクラップ処理 月5000トンに拡大へ 07/04/16
3地区電炉買値前週比300円上昇/4月2週 鉄源協 07/04/16
大阪、4万円目前/鉄スクラップ市況 メーカー手当て積極化 07/04/16
関東地区の鉄スクラップ相場 いぜん様子見状態 07/04/16
日本産鉄スクラップ 輸出相場、調整局面に/海外市況が軟調化 07/04/13
韓国鉄スクラップ市況 下げ局面強まる/POSCO、買値2万ウォン引下げ 07/04/12
マキウラ鋼業、シュレッダープラント一新/廃車リサイクルを強化 07/04/10
ステンレススクラップ、初の40万円突破/約1年で30万円上昇 07/03/19
輸出価格が過去最高 関東鉄源協/4月積み3万6000円 07/03/14
鉄スクラップ06年消費4900万トンに増/転炉向け6%アップ 07/02/19
東アジア・鉄スクラップ市場 07年も活況 07/02/15
06年輸出が過去最高/鉄スクラップ765万トン/中国向け20%減 07/02/02
鉄スクラップ 3万円時代到来/<上> 資源価値の高まり映す 06/12/27
鉄スクラップ 3万円時代到来/ <中> 関東鉄源協同組合 渡辺淳理事長に聞く 06/12/28
鉄スクラップ 3万円時代到来/ <下> 関西鉄源連合会 黒川友二会長に聞く 06/12/29
電炉・鉄スクラップ業界の課題と展望/ <上> 座談会 06/04/11
電炉・鉄スクラップ業界の課題と展望/ <中> 「電炉構改」進め競争力を 06/04/12
電炉・鉄スクラップ業界の課題と展望/ <下> 環境リサイクル飛躍に期待 06/04/13