鉄スクラップの炉前価格が関東、関西地区でH2トン3万円の壁を突破し、それが定着しつつある。6000円台の時期もあった5年前と比較すると約5倍の値段。ここまで上昇した要因は国内外の需要増加が挙げられる。日本産鉄スクラップは市況低迷期から脱出し、東アジアを含めた国際マーケットへ変貌した。この先、環境面において高炉メーカーからの需要拡大も予想されており、鉄スクラップの資源としての価値が高まっている。
市況低迷期だった2001年は電炉メーカーが減産していたことが影響し、需給は緩和していた。業界は転換期を迎え余剰分解消を目的とし、全国の鉄スクラップ業者が本格的に海外へ目を向けた。関東では関東鉄源協同組合が発足、関西では関西鉄源協議会が3年ぶりに共同輸出を開始し、現在の輸出マーケットの土台を作った。
日本からの輸出量は01年度が690万6000トンだったのに対し05年度は750万5000トンとなっている。ここ5年で日本玉を最も調達している中国の輸入量は、01年が約286万トンで05年が約340万トン。
現在は世界的な製品増産傾向にあり、東アジアの需給はひっ迫している。近隣の韓国や台湾も米国産鉄スクラップだけでなく、調達時間がかからない日本産鉄スクラップの輸入も重視している。韓国メーカーの現代製鉄は週に1度のペースで日本産鉄スクラップの輸入入札を慣行している。直近ではこの輸入オファー価格は日本相場を考慮した値段となっている。このため、日本国内の相場はかつては東アジア市況のローカル要因だったが、今では大きな影響を与える相場に変貌した。
また、国内消費量も増加しており、01年度の4061万トンに対し昨年度は4828万トン。今年は高層マンションの建設などおう盛な製品需要に支えられている。さらに高炉メーカーは増産目的だけではなく、環境対策の一環としても鉄スクラップの確保に動いている。転炉使用量は、01年度が約594万トンだったのに対し05年度は約1042万トンに増加している。
例を挙げると、JFEスチールはCO2排出量削減が目的で、08年度までに鉄鉱石・原料炭の代替として年間100万トン超の鉄スクラップを使用する計画をたてている。同社は鉄スクラップ購入量が05年度実績2万トンに対し今年度下半期は10万トンまで拡大する。
日本産鉄スクラップを取り巻く環境は、世界的な増産傾向に加え、環境対策の影響で新たな時代に突入している。
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