6000円から3万円へ。鉄スクラップの資源としての評価が高まり、価格は新たなステージに上がった2006年。「3万円時代到来」の最後は、関西鉄源連合会の会長を務める黒川友二氏(扶和メタル社長)にその背景を聞いた。
――H2トン6000円。どのような状況だったか。
「2001年5月から7月、メーカーのH2購入価格はトン6000円台に陥没した。電炉生産は前年の3000万トンから2800万トンに落ち込み、電炉の鉄スクラップ消費は前年から320万トンも急減。『余りものに値なし』の絶対的な消費後退から生き残りのために、海外に販路を求める輸出に向かわざるを得ない状況が出現した」
――それが、現在はH2がトン3万円台に到達している。
「それが鉄スクラップマーケットの怖さだ。あらゆる商品は需要と供給で力関係が決まる。6000円も相場だし、3万円も相場。日本の鉄スクラップも確かに余剰化したが、売り先に困るどころかこの余剰化を武器に海外へ860万トン輸出できる時代になった。価格はむしろ、供給側の意向を強く映す時代となった(資源産品高、需給変化による売り手市場化)」
――04年は乱高下の中の3万円だった。06年は1年間、右肩上がりが続いた。
「相場は一般的に『初体験』に警戒心が強い。04年は二十数年ぶりの3万円の出現にメーカーも抵抗したが、業者も定着するという自信までは持てなかった。それが乱高下の心理的な背景にあった。しかし、06年の3万円は体験済みで、落ち着いて行動できる。それに鉄スクラップだけ高いわけではない。原油は6倍、銅など非鉄は4―5倍、鉄スクラップはわずかに4倍にすぎない。価格の『ステージ』が変わったのだ」
――鉄スクラップを取り巻く環境に変化があった。
「鉄鋼、鉄スクラップ環境は世界的に激しく変化したとのひと言に尽きる。ひとつは、中国の粗鋼生産大爆発が資源産品・エネルギー需給の基本的な枠組みを変えた。また、日本の鉄スクラップ輸出が860万トン時代を迎えたのもこの中国を中心とするアジア全体の需要が急拡大したためで、日本産は圧倒的な影響力を確保するに至った。その結果、日本の国内価格や輸出動向は、今や米国と並んで世界の鉄スクラップマーケットに大きなインパクトを与えていると見ていい」
――国内の高炉、電炉による要因は。
「高炉・転炉鋼の生産シェアは97年度の67・7%から05年度74・2%と、6・5ポイントも上昇。転炉での鉄スクラップ配合比は同じ97年度の7・5%から05年度11・3%まで3・8ポイント上昇し、04年度以降、転炉での鉄スクラップ配合1000万トン時代を出現させた。さらに今後は地球温暖化防止の動きが一枚加わる。それが最近、高炉各社が競って鉄スクラップ使用を増やす背景にある」
「さらに高炉・転炉での鉄スクラップ配合比は、現在の11%前後から近い将来、2―3ポイント程度増加する公算が大きい。転炉1パーセント当たりの鉄スクラップ装入量は約90万トンだから、2ポイントとして180万トン。これに韓国・現代製鉄、台湾・中国鋼鉄第2高炉の稼働による買い付け増を含めれば、国内外の高炉の買い付けは現状から200万トン以上増加することも予測される。また、電炉では09年の東京製鉄・田原工場建設がある。先の高炉向けを含めて、鉄スクラップの流通が大きく変わる可能性もある」
――今後の業界としての取り組み方は。
「5、6年前、鉄スクラップの余剰から、切羽詰まって開拓したのが海外市場だ。関西ではさらに輸出が増えるであろう将来に備えて、関西の輸出を一本化するために若手が中心となり、関西鉄源連合会を立ち上げた。今後も余剰スクラップに関しては輸出で調整していくことになるだろう」
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