トップ > 鉄・非鉄スクラップ特集 > 鉄スクラップ

変貌する鉄スクラップ市場―需要拡大とグローバル化
(1) 価格決定権、海外に

日刊産業新聞 07/06/13

 北九州市。地元の大手ヤード業者T社の岸壁ヤードから5月下旬、2000総トン級のバラ積み船が韓国仁川港へ向けて出港した。3―5月積みで契約していた現代製鉄向けH2の出荷である。北は北海道・苫小牧から南は九州・鹿児島まで、海外向けの鉄スクラップの船積みは日常化している。「ここ数年、世界的な鉄鋼製品需要の拡大で鉄スクラップが再評価され、価格は高値で推移しているが、こうした動きは2010年ごろまで続く可能性がある。貿易量も増えていく」(三井物産)。短期的に増産に向かう国では、国内発生では賄いきれない。2006年で1300万トン強の鉄スクラップを輸入したトルコ。同国のアメリカ産スクラップの契約状況は、日本市場へも影響する。現代製鉄の毎週水曜日の日本での入札価格は、市況形成の重要な要素になってい鉄リサイクル工業協会の朴栄国会長は「スクラップの価格形成は、複雑化している。韓国内の需給動向とともに日本、アメリカの市況さらにはロシア市場の動きなども影響している。スクラップは国際商品になった」と語る。ある一定の市場の需給関係で価格が決定される状況は終わった。スクラップは、短期間に国境を軽々と越える。価格決定は、見えない海外メーカーの購入量や価格に強く影響される時代が到来した。
▼世界的な鋼材需要拡大が鉄スクラップを引き上げた

  世界の鉄鋼市場は、ここ数年で新しいステージに入った。IISI調査によると99年の世界粗鋼生産量は、7億8898万トン。06年には12億4383万トンへ57%も増加した。大きく押し上げたのは、中国。99年の1億2395万トンから4億2266万トンへ4倍近くの拡大である。

  需要拡大と生産の伸びが、世界の鉄鉱石価格を押し上げた。鉄鉱石価格交渉は02年から07年まで5年の連続値上げ。特に05年積み価格は、リオドセ(CVRD)などに押し切られる形で71・5%の大幅値上げとなった。

  世界の粗鋼生産は、まだ伸びる。中国に続き、インドの投資拡大が計画されている。オリッサ州だけで、POSCO、タタスチール、ジンダルスチールの各1200万トン一貫製鉄所計画、コーラスの600万トン製鉄所計画など11プロジェクトが挙がっている。

  こうした動きは、鉄鉱石価格の強気展開を示唆している。鉄スクラップの専門商社は「鉄スクラップ価格の上昇は鉄鉱石価格の上昇でスクラップのコストメリットが上昇したことが背景にある」と指摘。現に日本高炉の鉄スクラップ使用量は、02年の748万トンから06年には1116万トンに増加している。スクラップ配合率は、02年の8・7%から11・8%へアップしている。

  日本市場は、韓国電炉の輸入で下値抵抗線はトン当たりH2で3万円強まで上昇しているとの見方がある。つまり、日本市場で価格が3万円近くまで来れば、韓国電炉が買いに向かう。台湾メーカーも同様である。

▼韓国・台湾・中国・トルコの買い、アメリカ、日本、ロシアの売り

  「世界の鉄スクラップ市場は韓国、台湾、中国、トルコの輸入とそれに対応するアメリカ、日本、ロシアの輸出という形態で安定化してきている。このうち東アジア市場では、日本のシェアが増加傾向にある」。林誠一・鉄リサイクリング・リサーチ社長は、新しい構図の定着を指摘している。06年の韓・中・台3カ国のスクラップ輸入量は、1546万トンと推定。このうち日本からの輸出は572万トンに達した。05年の560万トンから12万トン程度の増加だが、シェアは12・5%から37・0%へアップ。これに対し、アメリカは453万トンから287万トンへ低下。ロシアも344万トンから177万トンへ低下しており、輸出市場での日本の存在感が増している。

韓国電炉の中で国際スクラップ市場での最大のプレーヤーは、現代製鉄。同社は、06年で鉄スクラップを韓国内と海外で1070万トン購入した。韓国内で750万トン、輸入が320万トン。このうち日本から190万トン、残りがアメリカとロシア。

  現代製鉄は、日本市場が5月連休に向け市況が上昇していく間、契約を見合わせた。4月入り後、提示価格を500円刻みで下げ、4月25日の提示価格は、H2ベースで3万6500円(FOB)。据え置き。具体的な契約はなかった。この間にアメリカ産スクラップを4カーゴ16万トン契約。ロシア産を3万トン契約している。現代は、日本市場の上昇期には、アメリカ、ロシア産で逃げ、沈静化する5月連休以降に日本産の契約を狙っている。

  鉄鋼製品の輸出入では、ある種の軋轢が発生する。最悪、ダンピング提訴といった動きで表面化するケースもある。しかし鉄スクラップに関しては、こうした問題も少ない。

  スクラップ貿易量の拡大は、鉄鋼製品需要の増加に後押しされたものであり、当然価格効果もあった。市場が決めたことであり、当分継続するというのが、一般的な見方である。

※本シリーズは、日刊産業新聞の07年6月13日から7月6日の間に計13回連載しました。

 注目の鉄スクラップ関連ニュース
山陽、加西にメガソーラー 13/03/18
鉄スクラップ1―3月見通し 輸出、前年上回る高水準 13/02/19
富士繁、八王子工場が営業開始 13/01/29
鉄スクラップ1―3月見通し 輸出、前年上回る高水準 13/02/19
富士繁、八王子工場が営業開始 13/01/29
イボキン、尼崎にヤード新設 12/12/21
共栄、水島工場の主要設備を一新 12/11/26
インド、鉄スクラップ輸入量78%増 12/11/06
ナベショー、マンション事業好調 鉄スクラップ事業と相乗効果 12/10/24
大都、大阪・南港に営業所新設 12/10/18
縮小する鉄スクラップ市場 生き残りをかけて/上 12/09/26
扶和メタル、埼玉に新ヤード開設 12/08/06
青函連絡船「羊蹄丸」解体へ 12/07/13
「鉄スクラップの日」 日本鉄リサイクル工業会 影島一吉新会長に聞く 12/06/29
新日鉄・広畑、鉄スクラップ 外部玉に依存せず 12/06/25
中国、鉄スクラップ利用拡大 鉄鋼備蓄、15年100億トンへ 12/05/11
ナベショー、中古機械取引を本格化 売買仲介サイト立上げ 12/04/20
2020年廃車発生 3割減試算 シュレッダー稼働率30%割れ 12/03/27
共栄、水島工場の設備一新 12/03/07
メッツォ・ジャパン、アジアでグループ連携 12/02/21
鉄スクラップ需要、電炉増加見込み 12/01/13
鉄スクラップ市場動向を聞く/増井重紀・扶和メタルUSA社長 11/12/28
東金属、再生手続き開始 ヤマダ電機がスポンサー契約 11/11/28
オカガミ、今期扱い3万トン計画 11/11/15
鉄スクラップ市況、東西で3万円割れ 1年ぶり 11/10/26
韓国鉄スクラップ業界、ヤード許可制に戸惑い 11/09/13
税関別鉄スクラップ輸出 1―6月 11/08/17
丸紅テツゲンの戦略/大林啓二社長に聞く 11/07/12
東京製鉄の購買戦略/鉄スクラップ市況は海外牽引 11/06/23
東北3県、鉄スクラップ89万4000トン 回収量を試算 11/05/24
エンビプロHD、長野大手を完全子会社化 11/04/21
上級新断スクラップ、鋳造向け需給ひっ迫 11/03/30
中山鋼業、低級原料で高品質製品 11/02/10
産業振興、ヤード開設拡張相次ぐ 11/01/12
伊藤忠商事、大連にリサイクル拠点 10/12/27
平林金属、玉島物流拠点が完成 鉄スクラップ在庫集約 10/11/10
大都、助松埠頭のヤード拡張 工場誘致も検討 10/10/29
本紙鉄スクラップ企業調査 下期市況は強弱両含み 10/09/16
マキウラ鋼業、金属選別ライン増強 10/08/25
廃車鉄スクラップ、09年発生7%増 204万トン 10/07/27
メタルワン建材、川崎第2ヤード開設 10/06/29
三井物産、資源投資を積極化 10/05/25
丸紅テツゲン、供給網拡充に重点 10/04/27
鉄スクラップ、中・韓・台が主導権 10/03/18
ナベショー、鉄スクラップ取扱量 6年連続200万トン超 10/02/26
岐路に立つ 鉄スクラップ業界/鉄スクラップ輸出、合理的仕組み構築カギ 10/01/14
岐路に立つ 鉄スクラップ業界/鉄スクラップ市場、国内低迷もアジア活況 10/01/14
三井物産メタルズ 堺事業所、廃車処理から撤退 09/12/15
日本鉄スクラップシンポジウム(5)パネル討論/アジアの鉄スクラップ市場はどのように変貌をとげるのか 09/11/24
日本鉄スクラップシンポジウム(4)テーマ別講演/世界の鉄スクラップ需給見通し 09/11/24
日本鉄スクラップシンポジウム(3)テーマ別講演/世界の鉄鋼需給見通し 09/11/24
日本鉄スクラップシンポジウム(2)テーマ別講演/日本経済の現状と鉄鋼産業の今後の方向性 09/11/24
日本鉄スクラップシンポジウム(1)東部製鉄社長・特別講演 09/11/24
電炉・鉄スクラップ 混迷する業界(上) 09/10/07
JFES・京浜シャフト炉再稼働 鉄スクラップ、需給タイト化も 09/9/07
鉄スクラップ、1―6月消費半減 09/8/13
日本鉄リサイクル工業会 全国インタビュー 09/7/1
高炉大手、鉄スクラップ購入再開 09/6/2
鉄スクラップ 国内消費7年ぶり減 09/5/21
鉄スクラップ輸出7倍 1―3月 大阪湾岸 09/4/15
鉄スクラップ、輸出次第で国内上伸も 09/3/25
ダイワスチール、スクラップヤード拡張 09/2/27
鉄スクラップ、炉前価格が反発局面 09/1/14
JFEスチール・京浜、鉄スクラップ利用促進 08/12/17
山本資源、ベトナム進出 初の海外進出 08/11/12
激化する資源調達戦 鉄スクラップ新時代/(1)貴重な金属資源 08/8/21
日本鉄リサイクル工業会 中辻恒文会長インタビュー 08/7/1
韓国、鉄スクラップ需要600万トン発生 08/6/10
鉄スクラップ “6万円時代”到来 08/4/14
大原商事、スクラップ事業に本格参入 08/3/31
鉄スクラップ関西共同輸出入札、過去最高値 08/2/27
三井物産金属原料と三井物産非鉄販売、合併 08/1/31
丸紅テツゲン、蒲郡にヤード開設 07/12/20
JFEスチール、京浜に導入/大型シュレッダー設備 07/11/08
ステンレススクラップ 大阪、半年ぶり上昇 07/10/02
扶和メタル、米国進出 07/09/03
栗本鉄工、飲料缶リサイクル子会社 田口金属に売却 07/08/27
新日鉄、大分に新設 国内最大規模シュレッダー 07/07/12
変貌する鉄スクラップ市場―需要拡大とグローバル化/(1) 価格決定権、海外に 07/06/13
鉄スクラップ国際市場 需給再びタイト化へ/トルコ・韓国 米産手当て再開 07/05/02
鉄スクラップ関東炉前価格 3カ月ぶり下げ/輸出配船が低迷 07/04/27
鉄スクラップ、一部で値下げ 大阪 07/04/27
国内購入3000万トン突破/06年鉄スクラップ、東北除き前年上回る 07/04/24
地域別鉄スクラップ輸出 06年、国内高で6%減/北陸・近畿・中四国は増加 07/04/16
東港金属、最新シャー稼働順調/スクラップ処理 月5000トンに拡大へ 07/04/16
3地区電炉買値前週比300円上昇/4月2週 鉄源協 07/04/16
大阪、4万円目前/鉄スクラップ市況 メーカー手当て積極化 07/04/16
関東地区の鉄スクラップ相場 いぜん様子見状態 07/04/16
日本産鉄スクラップ 輸出相場、調整局面に/海外市況が軟調化 07/04/13
韓国鉄スクラップ市況 下げ局面強まる/POSCO、買値2万ウォン引下げ 07/04/12
マキウラ鋼業、シュレッダープラント一新/廃車リサイクルを強化 07/04/10
ステンレススクラップ、初の40万円突破/約1年で30万円上昇 07/03/19
輸出価格が過去最高 関東鉄源協/4月積み3万6000円 07/03/14
鉄スクラップ06年消費4900万トンに増/転炉向け6%アップ 07/02/19
東アジア・鉄スクラップ市場 07年も活況 07/02/15
06年輸出が過去最高/鉄スクラップ765万トン/中国向け20%減 07/02/02
鉄スクラップ 3万円時代到来/<上> 資源価値の高まり映す 06/12/27
鉄スクラップ 3万円時代到来/ <中> 関東鉄源協同組合 渡辺淳理事長に聞く 06/12/28
鉄スクラップ 3万円時代到来/ <下> 関西鉄源連合会 黒川友二会長に聞く 06/12/29
電炉・鉄スクラップ業界の課題と展望/ <上> 座談会 06/04/11
電炉・鉄スクラップ業界の課題と展望/ <中> 「電炉構改」進め競争力を 06/04/12
電炉・鉄スクラップ業界の課題と展望/ <下> 環境リサイクル飛躍に期待 06/04/13