国内市況が低迷していた2001年、全国の鉄スクラップ業者が本格的に海外へ目を向け始めた。この年、関東では関東鉄源協同組合が設立された。同組合が実施している輸出入札は国内外から注目を集めている。国内相場がここまで上昇した要因、ここ数年の輸出事情などを、渡辺淳理事長(丸和商事社長)に語ってもらった。
――01年は鉄スクラップ相場の低迷期だった。
「バブルがはじけて電炉メーカーからの需要が減少したことにより、国内価格は輸出価格を下回っていた。メーカーは業績が良くなかったから、今みたいに鉄スクラップの購入価格を海外相場に対応させることが難しかった」
――ここまで上昇した要因は。
「やはり中国需要が一番の要因だろう。さらに世界的に鉄鋼業界が上向いているし、国内の景気も良くなってきている。現在は電炉メーカーは収益を上げているため輸出価格に対抗できる」
――04年に一時期3万円に到達した。
「04年は中国で鉄鋼業界以外の人も投機目的で相場に関与したため、一時的に上昇したが、中国政府が鉄鋼に関する金融の引き締めを実施したことにより下がっていった。04年は最高値と最安値で1万5000円位の開きがあるなど乱高下があった年だった。今は鉄鉱石やフレートの価格が上昇しており、鉄鋼製品の価格がワンランク上がっている。04年みたいに一時的に何か起こったわけではない」
「経験則から言えば3万円という値段はびっくりするほど高いが、鉄鋼製品の価格が上昇している。当然とは言わないが、そういった側面から見れば極端に高くはないと思う」
――国内と輸出の力関係は。
「もともと輸出は過剰分を解消する目的だった。当初は赤字の方が多かったが、今はビジネスとして成立している。輸出成約価格はその時にベストな価格を選択する。輸出は継続して行うことに意義があり、やめると確実に国内相場は下がるだろう。ただ我々は基本的には国内重視の姿勢だ」
――全国各地から輸出が実施されている。
「輸出を始めた頃(90年代)は比較的大規模な業者が集中している関東からだけだった。しかし、今は全国各地から輸出が行われている。これが昔と今の大きな違い。メーカーが周辺にない業者は、時間をかけて他県にあるメーカーへ運ぶよりは、地元港で輸出をした方が利益が出ると同時にそのノウハウを得ている」
――相場の指標となる関東鉄源協の輸出落札価格について。
「結果的に輸出相場の指標をつくってしまうわけだから、国内外から大きな注目を浴びているのは事実。東南アジアはともかく、世界の鉄スクラップマーケットに影響を与えているだろう」
――今年は相場が右肩上がりだ。
「市況商品で下げがないのは珍しい。要因としては国内外問わず電炉メーカーの需要がおう盛なこと、高炉の鉄鋼製品の価格が上昇していること、原料価格が高くなっていることが挙げられるだろう」
――来年以降は。
「はっきりしたことは言えないが、1回下落したとしてもすぐに戻る可能性は考えられる。ずっと3万円台が定着するかはわからない。ただ、製品価格という観点から見れば3万円はもはや壁ではなくなっている」
――今するべきことは。
「今業界はものすごく良い状況。どんどん仕入れ価格を上げてる業者もあるがこれは間違い。まずは自分の会社の利益をしっかり蓄えることが大事。また、こういう時にこそ環境問題、従業員対策、安全対策を徹底すべき。相場の良しあしに関係なく会社を長続きさせる一番のポイントは、これらをきっちり徹底することだろう」
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