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レアメタル新世紀/<3> リサイクルで資源確保
回収技術の開発進む

日刊産業新聞 07/04/27

<最終回>  

 世界に広がるレアメタル資源確保の動き。日本も中国に替わる新たな供給基地の開拓を進めているが、そこには大消費国へ転換した中国が国家を挙げて資源獲得に乗り出している。海外のレアメタル資源確保が一段と難しくなる中、日本は得意とするリサイクル技術により資源確保をめざしている。

  秋田県小坂町。DOWAホールディングスの製錬拠点である小坂製錬に、リサイクル原料用の新炉建設の槌音がこだまする。

  DOWAは秋田県内のグループ企業を中心に使用済み家電製品や廃触媒などから、貴金属を含めたレアメタルを回収している。銅、鉛、亜鉛などを含め回収元素は17種類。リサイクル新炉が来年春に稼働すると、回収元素は19種類に増える。

  白金系貴金属メーカーのフルヤ金属(東京・豊島)は、茨城県のつくば工場のルテニウム精製能力を倍増する予定だ。ルテニウムはハードディスク駆動装置向けの需要が急増している。ただ、年産量は25トンと少ないため、国際価格は過去1年間で10倍に急騰した。

  主に亜鉛製錬の副産物として生産されるインジウム。世界の地金生産量は年間約1000トンで、7割強がITO(インジウム・錫酸化物)スパッタリングターゲット材向けに消費される。

  ITOはフラットパネルディスプレー(FPD)の透明電極材料。需要は増加傾向にあるが、新地金の生産量はわずか500トン。最大の生産国である中国産地金の減少も加わり、国際価格は一時キロ1000ドルと03年初比で10倍になった。

  不足分を補うため、日本のターゲット材メーカーは使用済みITOなどからの回収を強化。地金のリサイクル原料比率は最近5年間で50%から70%に上昇した。

  日本が得意とする製錬技術を応用したリサイクル。海外資源の開発とともに、レアメタル資源確保のための重要な戦略として期待されている。

  ただ、現段階で積極的にリサイクルされているのは貴金属などの一部。インジウムはまれなケースで、中には回収の仕組み自体が存在しない場合もある。

  インジウム20トン、タンタル100トン、希土類1200トン、アンチモン900トン…。電子機器に含まれていながら、未回収のまま一般ゴミとして日本で廃棄されるレアメタルは予想以上に多い。

  「捨てないで!それも大切な資源です」。

  秋田県大館市で昨年12月から今年3月末まで行われた社会実験。携帯電話やゲーム機、ACアダプターなどの使用済み小型電子機器を回収するため、人口約8万人の大館市内に約3万5000部のビラが配布された。

  「携帯電話100グラムでは資源にならないが、1トン集めれば十分資源になる」と、この社会実験を主導する東北大学の白鳥寿一教授(DOWAエコシステム)は説明する。

  3カ月間で集まった小型電子機器は4トン。07年度も集荷対象地域を能代市などに広げ回収実験を継続する。最終目標はもちろん、廃棄処分されている電子機器からのレアメタル回収だ。

  レアメタルリサイクルの輪は徐々に広がっている。

  ハイブリッド自動車に使われるニッケル水素電池には、1台当り推定で水素吸蔵合金3・1キロ、ニッケル8・6キロ、コバルト1キロが含まれている。

  水素吸蔵合金の最大手である三井金属は、製造拠点の竹原製煉所(広島県)で使用済みニッケル水素電池から、これらのレアメタルを回収する仕組みを検討している。

  三菱マテリアルは子会社の日本新金属で、超硬合金からのタングステンリサイクルを行っている。

  「バーゼル条約は電気・電子機器廃棄物の国境移動を禁止するのではなく、積極的に行う必要がある」。

  DOWAホールディングスの吉川廣和会長は昨年11月、ケニアの首都ナイロビで開催されたバーゼル条約締結国会議に出席。途上国の廃電子機器は、「(リサイクル技術のある)われわれが有価で回収する」と強調した。

  たとえばインジウムの可採年数は10―20年といわれている。鉄鋼、自動車、家電といった日本の基幹産業が将来も成長するには、地中にある資源以外に、すでに加工された資源にも目を向ける必要がある。そのためには、すべてのレアメタルを回収できる枠組みや技術の確立が重要になる。(増田正則)

<最終回>  

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