日本ダイカスト協会 新会長に聞く…甲斐宏氏
中小積極支援 底上げ図る
日刊産業新聞 08/6/13
日本ダイカスト協会は、本年4月1日付で4組合(日本ダイカスト工業協同組合、中部ダイカスト工業協同組合、関西ダイカスト工業協同組合、兵庫県ダイカスト工業協同組合)と事業統合した。今後は、技術者の派遣や人材育成などを通じて中小企業への支援を積極的に行い、業界全体のレベルアップを図る方針だ。このほど新会長に就任した甲斐宏・エーケーダイカスト工業所社長に、今後の取り組みなどを聞いた。
――まずは会長就任の抱負を。
「まさに晴天の霹靂。前会長が任期途中で辞任したため、当時の副会長から会長を選任しなくてはならなかった。本来であればこれまでのように大手メーカーの社長から会長が選ばれるべきところ。ただ私は以前、中・小ダイカストメーカーが加盟する全国ダイカスト工業協同組合連合会の理事長を務めた経験があったため、今回、会長という大役を務めることになった。抱負としては、国内ダイカストメーカーの80%以上は、従業員100人以下の中・小企業であることから、協会の活動をこれまで以上に中・小企業向けのものとし、国内ダイカスト業界の底上げを図りたい」
――4月1日付で日本ダイカスト協会と全国の4組合は事業統合した。現在の進捗状況は。
「委員会など組織整備がおおむね完了した。2月1日から6月30日まで入会金が免除となる正会員入会キャンペーンを実施しており、これまで60社ほどの新規入会があった。これにより、全体会員数は220社ほどに拡大した」
――今後の取り組みは。
「まずは、従来の会員と新規で加盟した組合員との融合、親睦を図りたい。全会員には、当協会は大手上場企業の集まりではなく、すべての会員に平等に開かれた会であることをしっかり認識してほしい。具体的な取り組みは、協会の賛助会員である機械メーカーや周辺機器メーカーとの連携を強化し、会員のニーズに応えた有用な情報提供をしていく。例えば、賛助会員であるメーカーの現場担当者による技術発表会を定期的に開催する。大手ダイカストメーカーには、これまで以上に工場見学などを通じて、生産ノウハウや技術面での援助をしてもらう。また、当協会は大手メーカーのOBを技術者として登録し、会員からの要望に応じて派遣する制度も確立しており、会員には積極的に活用してほしい」
――今年3月アーレスティ栃木で爆発事故が発生したが、安全・環境面での取り組みは。
「事故の後、経済産業省から安全面での見直しを要請する文書通達があった。業界一丸となって安全対策などの取り組みを強化する必要がある。また、環境面においては、大口需要家である自動車メーカーなどからの要請もあり、ダイカスト業界では以前から積極的な取り組みを行ってきた。原料となるアルミ二次合金について、今後も3R(リデュース・リユース・リサイクル)をさらに推進させる」
――中国など海外メーカーの追い上げが厳しいが。
「国内中・小メーカーは、中国や東南アジアのメーカーに対して危機感を抱いている。しかし、日本のダイカストメーカーは世界トップクラスの研究開発力・技術力・品質管理能力などを持っており、ニッチ市場など我々が売り上げを伸ばしていける分野は多くある」
――金型の保管費用がダイカストメーカーにとって大きな負担となっているが。
「金型の保管期間は長期化しており、10―20年に及ぶものもある。大型のものを保管する場合、メーカーにとって保管場所の確保も大きな負担となっている。こうした中、昨年6月に経済産業省は金型保管に関するガイドラインを策定し、当協会でも『ダイカストの標準(金型取引編)』をまとめた。こうしたガイドラインを基に、今年から各メーカーが自動車メーカーなど需要家に対して、金型保管費用の支払いを要求し始めている。中小メーカーの負担を軽減するためにも、協会としてこの問題に引き続き取り組んでいく」
――最後に今年度のダイカスト需要について。
「ここ数年、国内ダイカスト需要は、けん引役自動車向けが好調だったことを受けて、増産傾向を維持しており、今年度は117万―120万トンで推移する見通しだ。ただ、原油高や北米市場の自動車販売低迷など懸念材料もあり、当初の予想を若干下回る可能性もある」
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