真鍮(黄銅)開祖で知られる庚申山広徳寺(滋賀県甲賀市水口町山上)で先月28日、本堂再建の上棟式が行われた。船原廣照住職をはじめ信徒総代や地元関係者、京都伸銅会の代表者らが参加して、工事の安全を祈願した。
「庚申さん」の通称で知られる広徳寺本堂は2013年4月、漏電と見られる火災で全焼。その後の二度の台風被害で復興が遅れていたが、昨年に再建が決定し、今年6月23日に地鎮祭と起工式が行われた。建坪は焼失前とほぼ同じ規模の40坪で、総工費は7250万円。来年3月末に完成、4月に落慶式を行う予定。
広徳寺は桃山時代の文禄2年(1593年)、地元百姓・藤左衛門が断食修行中に現れた童子から、銅と亜鉛を配合する黄銅製法を授かったと伝えられている。山上の境内には江戸時代から現代に至るまで、全国の銅業者から寄進された石碑、石灯篭、鳥居、玉垣、藤左衛門銅像などの文化財が多数残る。
毎年1月には初護摩会(はつごまえ)が行われ、伸銅メーカーや伸銅品問屋、原料問屋などの業界関係者が安全や商売繁盛を祈願してきた。本堂に通じる裏参道(車道)は、このほど治山工事が終了したため、年末にかけて修繕・整備工事が実施されて便が良くなる見通し。