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各社とも20―30%の生産能力削減に踏み切り、特殊箔や高機能箔など、電子材料業界全体の流れとして、高付加価値製品へのシフトを進めた。
また、中国、台湾では陥没価格是正の動きも広がった。
アンチモンに始まりモリブデン、インジウムへと連鎖した急騰の流れは、中国依存症という供給構造のゆがみから生じたものだ。
アンチモンは9月にかけて5年ぶりの高値に急騰した。モリブデンは5―6月に歴史的な大暴騰を経験、さらに、インジウムも12月にかけてオファー価格が急騰した。対して需要の伸びは鈍かった。
夏場以降、特に目立ち、年末にかけて出回り改善の兆しがますます薄れた。この影響は、次第にメーカーの原料対策にも及び始めている。
イラクの大量破壊兵器開発計画をめぐる動向や、北朝鮮の核開発再開に伴う国際情勢の緊迫化。さらには米国経済の先行き不透明感が強まり、「有事の金買い」として投機資金が集まった。
国際情勢の緊張状態は年明けも続くとみられ、金価格はしばらく堅調に推移しそうだ。
2002年非鉄金属業界の10大ニュース
日刊産業新聞 2002/12/26(木)2002年の非鉄、軽金属業界は、ITバブル崩壊後、「再生」を期した1年だった。製品在庫調整後の需要回復を受けて生産は上向いたが、波の大きさと先行き不透明感にメーカーが戸惑う場面が見られ、息切れもうかがえた。電線メーカーの中間期は、大手がすべて赤字を計上、真に再生するには、まだ相当の時間を要し、事態の打開に向けた自助努力が一層求められている。非鉄金属業界の10大ニュースから本年を振り返ってみる。 |
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(1)製錬業界再編加速
日鉱金属と三井金属による銅最大手連合が来期からの提携強化を打ち出したほか、すでに鉛で7月に提携に至っていた三井金属と東邦亜鉛が、電気亜鉛でも共同化を図ることが報じられ(12月)、三井はすでに始動している蒸留亜鉛での住友金属鉱山との事業と併せ、製錬のテコ入れメニューにメドを付けた。亜鉛では、同和鉱業が三菱マテリアルと加工販売で合意(10月)、同社は採算難の硫酸事業でも住友金属鉱山と提携に踏み切った。(2)大手電線全メーカー中間期赤字に
北米市場でのITバブル崩壊から、大手電線メーカーの03年度3月期中間決算は史上初の6社すべてが最終赤字に転落。四半世紀ぶりの銅電線需要年間80万トン割れ、光ファイバー・光部品需要急減に直撃され、回復までに2―3年要するという先行き不透明感にも覆われ、黒字復帰への道のりは平坦ではない。これを促進剤に、すでに稼働している電力向け事業以外にも巻線、建設・電販など事業提携の動きが拡大、成果確保を急いでいる。(3)伸銅メーカー、中国進出本格化
古河電工と日立電線は10月、中国現地企業と3社合弁による銅管製販会社「上海日光銅業有限公司」を設立した。古河電工はこのほか、9月に無錫の伸銅条製販会社(建設中)内にコイルセンターを設立。また、古河精密金属工業と共同で広東省に端子コネクター貴金属めっき製品の製販会社「古河精密(中山)有限公司」を設立している。他方、同和鉱業も10月にIT向け伸銅品の加工・販売会社「同和金属材料(上海)有限公司」を設立。来年3月には「錫リフローめっきライン」を導入することが決まっている。(4)伸銅品生産、圧延・押出―二極化鮮明
IT・半導体関連の在庫調整が完了し、条材の需要は春先から回復過程に入った。特にリン青銅板条は7月に前年比50%増を記録。また、銅・黄銅条も同20%増以上に達するなど圧延製品は大幅な回復を見せた。他方、銅管は海外シフトによるアウトインの加速で低水準を維持、黄銅棒は主力の住宅関連が盛り上がらず、低調に推移した。結果、圧延製品と押出製品との二極化が鮮明に浮き彫りとなり、前年に続いて年産100万d割れは必至となった。(5)新日鉱グループ船出
9月27日、非鉄業界最大の売り上げ規模2兆円超の一大企業グループが発足した。金属、石油市況の低迷などから厳しい経営環境に置かれているが、豊富な経営資源を中核となるジャパンエナジー(石油)、日鉱金属(金属)、日鉱マテリアルズ(電子材料)をはじめグループ全体で、持ち株会社である新日鉱ホールディングスを窓口に競争力強化、戦略的事業提携の推進、重点投資を切り口に効率活用していく。(6)銅箔メーカー生産態勢の再構築
三井金属や日鉱マテリアルズなど国内電解銅箔メーカーの生産態勢の再構築が相次いだ。IT製品の需要回復が鈍く、供給過剰が続いていたため。国内や中国、東南アジアの需要は堅調だが、欧米の需要不振が深刻。各社とも20―30%の生産能力削減に踏み切り、特殊箔や高機能箔など、電子材料業界全体の流れとして、高付加価値製品へのシフトを進めた。
また、中国、台湾では陥没価格是正の動きも広がった。
(7)レアメタル相場「高騰」
本年のレアメタル相場を一文字で表現するならば「騰」が最も的確だろう。アンチモンに始まりモリブデン、インジウムへと連鎖した急騰の流れは、中国依存症という供給構造のゆがみから生じたものだ。
アンチモンは9月にかけて5年ぶりの高値に急騰した。モリブデンは5―6月に歴史的な大暴騰を経験、さらに、インジウムも12月にかけてオファー価格が急騰した。対して需要の伸びは鈍かった。
(8)非鉄業界事故相次ぐ
7月、三井金属子会社の日比製錬所(岡山県玉野市)で、炉修工事の最中、炉壁が崩れ死亡者が出る事故が起きた。ほかにも国内では硫酸漏れ、爆発事故、また海外でも豪州で水蒸気爆発事故などが発生。ほかにも鉛溶出基準超過、排出基準を超えた重金属の検出など管理態勢が問われる場面が少なくなかった。事故は、外部から人員削減の影響と指摘されているが、業界内部では「個別の問題」との声が根強い。(9)銅原料深刻な品薄
スクラップは、作り出されるものではなく生産消費活動の結果。設備投資の抑制、中国向け輸出増加など銅スクラップ原料は構造的な品薄に見舞われ、本年はさらに深刻化。需要が、IT関連生産が立ち上がった伸銅メーカー向けで回復したものの、市中ディーラーは「肝心の売る物がない」と嘆く。夏場以降、特に目立ち、年末にかけて出回り改善の兆しがますます薄れた。この影響は、次第にメーカーの原料対策にも及び始めている。
(10)金価格が約6年ぶり高値水準に急騰
金価格が年末にきて1オンス340ドル台と約6年ぶりの高値水準に急騰した。これを受け国内価格も先物、現物ともに本年の最高値圏に上昇した。イラクの大量破壊兵器開発計画をめぐる動向や、北朝鮮の核開発再開に伴う国際情勢の緊迫化。さらには米国経済の先行き不透明感が強まり、「有事の金買い」として投機資金が集まった。
国際情勢の緊張状態は年明けも続くとみられ、金価格はしばらく堅調に推移しそうだ。