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マグネシウムに未来はあるか <上>

伸び悩む市場

日刊産業新聞 2002/9/2

 日本のマグネシウム需要が伸び悩んでいる。マグネ市場は携帯電話・パソコン向けの筐体需要を伸ばし00年には約3万4000トンと拡大したものの、今では需要が伸び悩み、年間3万トンペースにトーンダウンしている。需要増大には自動車関連部品へ採用がさらに進む必要があるが、そのスピードは遅い。マグネの需要動向を追うことで業界が抱える問題点が明らかになってきた。

 ▼パソコン・携帯の出荷量減少

 「夢で食っているようなものだ」。日本のマグネシウム地金取り扱い商社関係者は一向に拡大しないマグネ市場をこう表現する。これまでは携帯電話・パソコン向けの筐体としてマグネは需要を拡大してきたが、電気機器の出荷が伸び悩み、近年、需要拡大のスピードダウンしてきた。

 マグネ製のパソコン・携帯筐体が発売された当初は「電磁波シールド性に優れるといった素材特性に加え、新奇性が消費者のニーズをつかんでいた」とダイカストメーカー関係者は指摘するが、今ではマグネ製を売り文句にはできないという。

 そして、ここにきて携帯電話素材として台頭してきたのが「樹脂」だ。携帯電話程度なら、電磁波シールド性に目を向けなくとも、樹脂などの低コスト素材で対応できる。素材間の競合が激化している。

 一方で、ダイカストメーカーからもマグネ製の筐体材向けに消極的な見方も出ている。ダイカストメーカーが問題視しているのが携帯・パソコンの商品ライフだ。

 パソコン・MD(ミニディスク)などの電気機器向けの商品ライフは短く、特にMDは半年でモデルチェンジされ、安定的な量産態勢が持続できるのか、常に問題になる。

 ▼3万トンの壁


マグネシウム筐体のパソコン
 日本マグネシウム協会が発表した02年のマグネシウム需要は年間約3万トン。ここ数年では98年の2万7196トンから00年にかけ3万4593トンまで需要は拡大したが、01年実績では2万7570トンと落ち込んでしまった。

 マグネの使用分野の大半はアルミ合金の添加剤として使用され、その需要動向はアルミ市場にかかっている。マグネ総需要のうち、アルミ合金向けは全体の6割以上のシェアを占める。

 さらに電子機器向け需要の拡大が困難となった一方で、業界関係者が期待するのは自動車関連部品向けの需要だ。

 統計上でも年々増大しており、一車種でも自動車部品としてマグネ製のものが採用されれば、生産量に比例して爆発的な需要拡大が期待される。マグネ地金取り扱い商社は「年間需要量6万トン程度で最大のスケールメリットが出る」と見ている。