トップ > 記事特集
【アジアン・メタルマーケット】

韓国「自信と戸惑い」

急回復の鉄鋼需要

日刊産業新聞 2002/8/12

 韓国の国内鉄鋼需要が急回復している。POSRIが年初の需要見通しを6月上旬に上方修正したのに続き、韓国鉄鋼協会も6月末に修正。輸出を含めた2002年の総需要は5476万トン、前年比245万トン、4・7%の増加としている。鋼材生産は5027万トンと初の5000万トン台乗せを見込んでいる。懸案だった韓宝鉄鋼、三美特殊鋼、丸永鉄鋼といった企業の再編・再建問題も一定の軌道に乗りつつある。韓国の鉄鋼業は確実に力をつけつつある。

 ▼ミニバブル

 「POSCOは指定コイルセンターに対し、輸入ホットコイルを購入しても当面黙認する」。先々週、POSCOの某管理職が系列コイルセンターに、ひそかに通達したと言われる。POSCOは、輸入材は原則排除である。現に指定コイルセンターの輸入材のレベラーカット代は、国内材より高い5万ウォン。これが低下している。その分輸入材は、入りやすくなっている。

 POSCOのメーカー商社・ポスチール。国内では圧倒的な販売シェアを持っている。同社は、デリバリーのひっ迫を理由に東京製鉄のホットコイル5000トンを契約したと言われる。9月に入荷する。

 POSCOのメタルサイト、スチールNコムは、入札方式で販売している。最近、このネット販売で、ホットコイルの最高落札価格が40万ウォンを上回った。

 いずれも国内需要の拡大で、一時的に供給がひっ迫していることを告げている。

 ソウル市内の今川大路には、両側に鋼材問屋とサービスセンターが260社近く集まっている。関係者は「鉄筋を主体に販売は増えている。しかし、全体では単価は上昇しても年間販売量は増えないかも知れない」。それほど仕入れが、窮屈になっている。

 ▼需要拡大

 韓国の直近の不況は、97年末のウォン安とともに劇的に訪れた。国家予算はIMF管理になり、景気は大きく後退。自動車や家電生産が急落。98年の鋼材総需要は前年比15%も低下した。

 経済の地合いは、昨年秋から大きく変化している。自動車が売れ始め、住宅投資が拡大。これに連れ家電販売も増加している。住宅投資は、政府が景気対策の柱として強化。年の早い段階で発注されている。

 5月には、国内鉄筋販売の増加という形でその効果が表面化。同月の鉄筋販売は102万5000トン。97年11月以来4年6カ月ぶりに100万トンを越した。特に韓宝や丸永鉄鋼など一時経営難に見舞われた電炉は、2桁台の伸びである。

 今回の不況脱出では官需から民需主導へうまく移行できた。自動車販売は、前年比2桁近い伸びを示している。5月までの累計で、生産は131万台。前年比9・7%の増加。ただ6月に入り、現代自動車や起亜自動車がスト入りで、急減。上期全体では2・9%増に止まった。しかし増勢の基調は、変わっていない。

 ▼需要想定は2回上方修正

 韓国鉄鋼協会は昨年11月、2002年の需要想定と生産見通しを発表している。この時出された見通しは、総需要で5189万トン。前年比0・8%のマイナス。生産は、鋼材ベースで4878万トン。同微減。つまり調整型の需要見通しであった。

 その後の経済地合いの急激な変化から、3月に修正見通しが出された。総需要は5286万トン、同1・1%の増加。国内生産は4961万トン。同1・1%の増加。調整型から拡大型へ劇的に転換された。

 6月末に、再度の見直しが発表された。総需要は5476万トン、同4・7%増。このうち国内需要は4206万トン、同9・9%の増加。大きく見直された。この結果国内生産は、5027万トン、同2・4%増。初めて5000万トンを越す。

 韓国経済は、通貨危機後のビックディール(事業交換)とワークアウト(事業改善)を通して、「選択と集中」が進んだ。結果は、急回復という答えで返ってきた。

 しかし鉄鋼業では、増産と好況というプラスの側面とともにある種の不安も抱え込んだ。「寡占化が進んだH形など、市況が他製品に比べ10万ウォンも高くなったものが出現した」。「これらは、輸入品との国際比価に耐えられない可能性がある。試練は2004年の輸入関税ゼロ実施」。